【産業天気図・証券業】不透明な市場環境続く08年度は前半・後半とも「曇り」を継続

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予想天気
   08年4~9月  08年10月~09年3月

世界経済や金融市場の先行きに不透明感が漂う中、証券業の天気見通しは2008年度前半・後半とも前回同様「曇り」を予想する。

証券各社の前08年3月期決算は、ネット専業を含む上場22社のうち営業増益は、中国株関連の収益が好調だった東洋証券<8614>の1社にとどまった。営業減益は17社、米国会計基準の野村ホールディングス<8604>を含む4社が営業赤字に陥った。昨夏から続いてきた、米国のサブプライムローン(信用力が低い個人向け住宅融資)問題に端を発した金融市場の混乱は、今年3月末にかけて一段と混迷の度合いを深めた。株価急落と対ドルの円高が急進行。証券会社の収益環境が悪化した。

4月以降、株式・為替相場は落ち着きを取り戻し、3月に1万2000円を割り込んだ日経平均株価は、5月に1万4000円台を回復。3月中旬に1ドル95円台まで突っ込んだ為替市場も、足元は6月に入って1ドル100円台後半まで円安方向に振れている。市場関係者の間では「最悪期は去った」との見方が広がっている。一方で、投機資金が石油油や穀物などの商品市場に流れ込み、とくにWTI原油価格は1バレル130ドル台に突入するなど、世界的なインフレが経済を冷やす懸念も高まっている。過去5期連続で最高益を更新してきた日本企業も、このところの円高と原油高の影響を受けて、今期は減益に転じる見通しだ。それを映すかのように、東京株式市場の売買代金は盛り上がりに欠けたままだ。

「会社四季報 夏号」では、証券各社の今09年3月期業績予想について、前期に一部銘柄の株価急落で膨らんだ貸倒引当金繰り入れが、今期は縮小する見込みの藍澤証券<8708>が営業増益となる以外は、営業損益段階での減益もしくは赤字継続を予想した。
 
 証券会社にとっては、主力とする株式委託手数料収入が弱含んでいるほか、IPO(新株式公開)や増資引き受けなどの投資銀行業務も苦戦。07年前半は好調だった投資信託や外債などの販売についても、相場が弱含んでいる影響で足元は前年割れしている状況だ。投資信託の残高報酬や外債販売は堅調を保つものの、株関連収益と投信販売手数料の落ち込みをカバーしきれないだろうというのがメインシナリオである。

【武政 秀明記者】

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