となると、次なる目標は2025年の万博招致、そして大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)にIRの建設を、と夢が広がる。特に、MICEと呼ばれる大型ビジネスイベント会場の建設に期待が高まる。なにしろこの国ときたら、いまだにビッグサイトや幕張メッセを大事に使っているが、いかんせん海外のマリーナ・ベイ・サンズあたりと比べると見劣りがする。国際的な展示会や見本市などの需要を取り込んでいくためには、もっと最新鋭の会場を作る必要がある。
MICEは会議場やホテル、ショッピングセンターなどが一体となっているが、それらを経営的に支えるのがカジノの収益である。だいたいG8でカジノがないのは日本だけだ。観光立国を目指すなら、そして本気で富裕層を呼び込むつもりなら、カジノ解禁は避けては通れない。もちろん地元自治体には歳入が落ちる、という思惑もある。
大阪でのIR営業開始は2022年頃?
ただし、本当に大阪湾にIRが誕生するのは相当先のことになるだろう。
2016年末に成立したIR法案は、議員立法によるプログラム法案であった。同法の可決を受けて、政府は内閣総理大臣を本部長とするIR整備推進本部を、年明け1月にも内閣に設置する。そこで制度設計を詰めたうえで、IR実施法案の年内国会提出を目指す見込みだ。
この政府法案が可決されてから、ようやく設置区域や事業者の認定作業が始まる。施設の設計から建設にもかなりの日数がかかるだろうから、運営開始は早くても東京五輪後の2022年頃となるだろう。IR法案の国会審議では、「依存症対策」が大きな焦点となった。このことを受けて、おそらく政府はギャンブルのみならず、薬物も含めた包括的な依存症対策の法整備を検討することになるだろう。なにしろこの問題、国民的な関心が高いのだ。
実を言うと、カジノに限れば依存症対策はそんなに難しい話ではない。以前にも当欄で書いたように、日本が目指すIRはシンガポール型なので、自国民向けには1回数千円の入場料を取ることになるだろう。さらに、入国審査に使うような自動認証システムを使えば、「ウチのお父さんを出禁にしてください」といった細かな要望にも応えられる。
ところが現状の競馬場やパチンコ屋には、「ワケありギャンブラー」を排除する仕組みがない。依存症対策の議論をしているうちに、これら競技にも、とばっちりが来るかもしれない。それこそ競馬場の入口で、「マイナンバーを記入してください」などと言われるようにならないだろうか。ファンとしてはちょっと心配である。
そんなわけで、筆者はIR法案を支持する立場である。ギャンブルに限らず、これからの経済は「遊び」が主要な成長分野になると思うのだ。詳しくは拙著『気づいたら先頭に立っていた日本経済』(新潮選書)をご覧いただきたい。
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