パリの中高年が「裸族ビーチ」の虜になる理由 衣服から開放される「心地よさ」は想像以上だ

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ナチュリストでもヌーディストではない人たちもいますが、彼らにとっては、ドレスコード(dress code :服装規定)に縛られることのない服装で、解放された自分自身を取り戻すことが、自然回帰に通じていると思っているようです。そのため、階層としてはブルジョワ階級のインテリ層が多いと言われています。

そんなナチュリストたちが集うナチュリスト・ヴィラ。さすがに今どき、“太陽の下で解き放たれた性の饗宴”を妄想する人は少ないでしょうが、実態を知らない人たちが興味津々になるのは当然です。

実は、友人たちの何人かが、キャップダグドのナチュリスト・ヴィラを訪れていて、よほど愉快だったのか、その様子を何度も話してくれました。そんな彼らの潜入レポートを、皆様にもお伝えしましょう。

ナチュリスト・ヴィラが開かれるのは、主に夏のヴァカンス時期。ナチュリズムは生命を尊重しますから、無理をして風邪をひいてはいけません。ただし、なぜか大晦日だけは寒中水泳解放日となり、ニュースなどでも話題になります。

入村には超厳重なセキュリティチェックが必要

ヴィラに入るには、パスポートなどの身分証明が必須。厳重な所持品検査もあります。ゲートを過ぎると、そこからがヴィラ。入村してからも、セキュリティはしっかりとしています。興味本位の撮影は厳しく監視され、カメラを取り上げられるばかりではありません。追放されてブラックリストに掲載され、二度と入ることができなくなります。

ヴィラのあるビーチも厳密に仕切られていて、お隣のノーマル・ビーチから中を窺い知ることはできません。ビーチの長さは2kmもあって、ヴィラの中にはホテルやコンドミニアムから、ショッピングセンター、レストラン、ポスト・オフィス、ポリス・ステーション、クリニックなどが設置されています。何週間滞在しても、不便はありません。ちなみに、エリア内のホテルはすぐに満室になってしまうので、何カ月も前から予約が必要です。

なお、どの程度裸になるかは、個人の自由。薄手の布を腰に巻いたトップレス姿もいれば、Tシャツを着て下は何も着けていない人、ハットだけは被ってあとは一糸まとわぬ人など、多種多様。かつてはお店の人やポスト・オフィスやポリス・ステーションのスタッフも、何も身に着けずに対応していると言われていましたが、さすがに今は着装しているようです。

利用者の平均年齢は高めで、中高年の男女カップルが圧倒的多数のよう。子ども連れも多いようです。自然主義だからか、ジムで美しく鍛え上げられた肉体や大迫力のゴールデンボディばかり、というよりは、全般的にナチュラルにふくよかな人が多いようです。ですから、「万が一、エキサイトしてしまったらどうしよう」と悩んでいる男性たちも、心配は殆んどないようです。

ゲートからしばらく歩くと、豪華クルーザーやセーリング・ヨットなどがびっしり停泊しているハーバーがあります。これは、地中海をクルーズして、直接入村する富裕層のための港です。

渚にあるビーチレストランのあたりまで進むと、まさに全裸に全裸、スッポンポンの割合が急増します。さて、全裸になると、おしゃれは何で勝負しますか? オーソドックスなのは、ネックレスやアンクレット。男性はそれに加えて、下半身のアクセサリー(おっと失礼。でも本当なんです)。ボディピアスやタトゥーも人気です。ヴィラでは「着飾るためのゴージャスな衣服」は不要な分、おしゃれもまさに肉体勝負と言えましょう。

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