「画像直リンク」が原則違法にならない理由 WELQ問題を機に「写真」への考えは変わるか

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ただ、使用された画像の権利者が「無断使用をされた」と感じる気持ちは、「直リンク」であろうが、「複製した上での送信」であろうが、同じことだ。本来、オープンであるべきインターネットの世界では、リンクを張ってサイト同士がつながっていくこと自体は、ネガティブに考えられるものでない。しかし、「画像の直リンク」を自身のメディア運営のコストを下げるために行うことは、ネットの状況に未対応な著作権法の盲点を突いたもので、本来の趣旨から外れているのではないだろうか。「他の会社もやっているから」という理由で、こうした歪んだ競争が進んでいくことは問題だろう。

一方、山本弁護士は「情報化が進み、情報の取得が容易になった現代において、情報の峻別及び整理という役割の重要度は高まり、CGM型であるか否かにかかわらず、情報集約の役割を担うメディアはその存在価値は高くなっている」とも指摘する。こうしたメディアは、結果として個々のコンテンツを広くユーザーに頒布することにもなり、情報を広く発信したいコンテンツ作成者と利害が一致する可能性も十分にあるからだ。

萎縮効果が生じていることも問題

「最近では問題を具体的に検証することなく、『キュレーションメディア』=『悪』といった形で、様々な議論が区別されずに批判だけがなされていることが多い。これによって、良質な情報の流通を促進する情報集約型のメディアに対して萎縮的効果を及ぼしていることにも、また問題意識を感じている。『何が問題なのか』ということを整理した議論がかわされ、適切な情報配信の在り方が模索されることを期待したい」(同)

ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)によって情報が瞬時に拡散する現代にあっては、レピュテーションリスクは一企業の問題にとどまるものではない。行き過ぎた利益追求や歪んだ競争によって、ユーザーに本質的な価値を提供する可能性のあるサービスにダメージを与えてしまっては、本末転倒だろう。

実は「WELQ問題」が表面化して以降、閉鎖はされていなくても、トップページの画像がなくなっていたり、不自然に説明文のテキストだけが並ぶメディアの記事が散見されるようになった。違法とは言い切れないとはいえ、法的リスクを保守的に見直して「直リンク」の画像を取り下げるサイトも増えていると思われる。法規制に対してギリギリまで攻める場合に忘れられがちなモラルをどこまで考えるべきかは、残された大きな課題だ。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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