「止まらない日本株」が、いったん止まるとき 2012年のアベノミクス相場とどこが違うのか
筆者は前回テクニカル指標面などから見て「当面の日経平均のピークは1万8900円まで」と予想したが、相場は本当に強い。こうなると、「約半年で5割超上昇」という4年前の相場と同様の急騰劇も想定されるものの、やはり、ここからの上値余地は慎重な見方も必要だろう。
その根拠の一つは、信用取引における売り方の買い戻しが加速していることだ。目安となるのは6月24日の日経平均株価だ。この日は英国のEU離脱ショックから、前日比1286円安となる1万4952円まで急落した。
これ以降に空売り(株を借りて先に売却、値下がりした時点で買い戻して利益を得る)を試みた投資家は、損失限定の買い戻しを強いられる6ヵ月期日が到来している。この間、信用取引における二市場(東証、名証)合計の売り残は5000億円台から1兆円手前まで増加。日経平均株価採用225銘柄のうち、120銘柄前後の信用取組倍率が1倍を下回っている。つまり225銘柄の半数以上は買い残よりも売り残が多く、買い戻しを強いられる可能性が高いわけだ。
一時的に米国大統領選直後の11月9日、日経平均株価は前日比919円安となる1万6251円まで急落した(トランプショック)。その後、日経平均株価が11月下旬に12連騰、12月中旬にも9連騰と上げているのも、こうした踏み上げ相場の特徴ともいえよう。
上昇局面はどこで途切れるだろうか。12月20日の日経平均株価は1万9494円で引け、年初来高値を更新した。目先は前述のような買い戻しも伴って、もう一段上昇するのかもしれない。ただ、日銀金融政策決定会合が終わったことで年内の重要イベントも一巡し、今後は海外勢を中心に積極的な売買は手控えられそうだ。東証1部の売買代金も2.33兆円と、縮小気味だ。
その日銀金融政策決定会合では、金融緩和の現状維持を決めた一方、景気の総括判断を小幅に前進させた。黒田総裁は定例記者会見で足元の為替動向については「円安と言うよりはドル高、驚くような水準ではない」、ETF(上場投資信託)の買い入れについては「現時点で減らす判断は適切ではない」などと述べた。仮に一時的な円高などをきっかけに日本株に調整があったとしても、年金や日銀の買いだけでなく、企業の自社株買いも想定される。
平成初の「日経平均5年連続上昇」なるか
テクニカル面からみると、足元の日経平均株価は長期投資家の売買コストとされる「200日移動平均線」からの上方かい離が+15%超まで拡大している。年末にかけて一段高する現象(俗に「掉尾の一振」<とうびのいっしん>と言われる)も、ささやかれている。
ただ、前述の通り東証1部の時価総額も580兆円超に達しているなか、ここからの当面の上値余地は限定的かもしれない。12月22日には、売り方の6ヵ月期日が到来する。買い戻しが一巡すると、いったんスピード調整も考えられる。今からあせって買うと、含み損をかかえてしまう可能性もあると考えていたほうが良さそうだ。むしろ、今から買いに走るのではなく、年末にかけての押し目買いにも備えておいたほうがいいかもしれない。
実は、このまま行くと日経平均株価は平成初となる「5年連続高」ということになる。しかし、足元3年の上昇率は2014年が7.1%、2015年が9.1%、2016年はいまのところ2.4%(12月20日時点)と小幅にとどまっている。2015年の終値は1万9033円だった。果たして2016年の終値はいくらになるだろうか。
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