東京の空室率は3割、「不人気アパート」の盲点 「埋まる物件」との差はどこにあるのか
パルコカーサの「名物」は、オーナー3兄弟のうち長兄で、地元の町会で青少年部部長を務める田口昌宏氏だ。入居者がすぐに地域になじめるよう、同氏の音頭で入居早々から花見やバーベキューなどを開催。今では入居者が主導してイベントを開催するほど入居者同士の仲がよく、子育て世帯にも安心して住める場所なのである。
賃貸業界ではこのところ、こうしたコミュニティを重視した物件が増えており、面白いところでは、東郊住宅社が作った管理物件入居者向け食堂のトーコーキッチンがある。同食堂では、入居者に朝食100円、昼食・夕食500円といった破格で提供。取締役である池田峰氏自身が頻繁に訪れては入居者に声をかけるなど、コミュニティ的な温かみがあることも功を奏し、昨年末のオープンから1年で同食堂の近くに住みたいと人が集まるほどになっている。
「満室御礼」物件の共通点とは
「入居の決め手をアンケート調査すると、以前は礼敷・礼金ゼロゼロが8~9割だったが、今年春には食堂がそれを超す勢いで、食堂利用で外食費が減るなら家賃が5000円高くなってもいいという声もあった」と池田氏は話す。人が活発にかかわるようになれば、住宅や地域の価値は上げられるといういい例だ。
「満室御礼」の物件に共通するもうひとつの点は、不特定多数を対象とした募集をかけないこと。大手賃貸サイトは、情報が多くなりすぎ、数字や固有名詞では表現できない雰囲気やデザイン、コミュニティなどに特徴がある物件が消費者に届きにくい。一方で、手間をかけて作った物件の所有者は、その考えに共感し、建物やコミュニティを大事にしてくれる人に入居してもらいたいと考えている。であれば、不特定多数に告知する必要はない。
また、「足立区のパルコカーサは町会加入を条件にするなどして入居者を絞ったが、そうしたやり方で入居者を選ぶ動きも出ており、賃貸の入居者も選ばれる時代が来つつある」と、前出の谷氏は指摘する。選ばれる物件を作り、可能であればそこにコミュニティを醸成する。そして、入居してもらいたい人に響く告知ができれば、空室を恐れる心配はないのだ。
さて、最後にもし、親が不人気立地にもかかわらず、アパートを建設すると言い出したらどうするか。全力で止めてやめてくれればよいが、どうしても建てるという場合には腹をくくって親と一緒に経営に携わり、時間をかけても一緒に満室経営を目指してくれるビジネスパートナーを探すことである。それができれば賃貸経営は決して悪い商売ではない。ただ、頭を使わず、楽して儲かるやり方を志向するようなら、破綻は見えている。
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