東京の空室率は3割、「不人気アパート」の盲点 「埋まる物件」との差はどこにあるのか
もうひとつの問題は、土地所有者やハウスメーカーと、消費者のニーズを知る管理会社の連携がうまくいっていないことだ。近年、アパート建設は複数のハウスメーカーが競い合う状況になっており、一刻も早く、できるだけ利回りの高い試算を出さなければ受注につながらない。そのため、ハウスメーカーは管理会社に大至急で家賃の査定を依頼する。場合によっては、精査できないほど短期間で査定が行われることもある。
加えて多くの大家は利回りを重視しがちなため、家賃は高めとなる。建物の詳細が決まっていない状況で、家賃は高めに設定しながら、建設費は抑えるケースが多く、これによって、相場より高い、無個性の賃貸住宅が生まれるのである。
結局は大家が泣くはめになる
管理会社は家賃の査定を行い、その額で受注できた場合に管理を受託。竣工後に引き渡しを受けて管理が始まるが、大家とは長い付き合いになるため、できるだけ入居者に選ばれる物件にしたいと考える。だが、「最近は大家の自宅だけが立派で賃貸部分は競争力のない大量供給モデルだったり、ファミリー向けなのにガスコンロや下駄箱が小さかったりする物件も少なくない。とはいえ立場上、査定依頼時に意見は言えず、受託は予算決定後なので変更も難しい。結局、部屋が埋まらずに大家さんが泣くことになる」(谷氏)。
管理会社によっては、空室が出ても管理会社側がサブリースで数十年間一括で借り上げると同時に、家賃保証するとうたうところもあるが、サブリースでは家賃減額を要求されたり、解約を通告されたりするトラブルも少なくない。よほど立地がよく、人気の高い物件ならまだしも、大した魅力のない土地であることに気がつかず、管理会社に丸投げしてしまう時点でその大家は失敗しているのである。
一方、空室率が上昇し続ける中、圧倒的な人気を集める物件も少なからずある。たとえば2016年7月に京王線幡ヶ谷駅から数分の場所に誕生した全3戸の「ブランシュ」。相場より家賃が1~2万円高いにもかかわらず、部屋探しをする人が少ない7~8月に、情報解禁からの20日間で95件の問い合わせが入った物件だ。
注目を集めたのは、単身者向けでは日本初であろうメキシカンハンモック。これは一般的なハンモックと違い、縦横斜め、どの方向にも寝られるもので、室内にはあらかじめ、利用時に使う踏み台も用意されている。普通にはない設備が注目を集めたわけだが、決め手はそれではないと企画・管理担当のPM工房社の久保田大介氏は話す。
「豊富な収納、単身者には大きめサイズの追いだき機能付きバスルーム、オートロック、防犯カメラ、宅配ボックスなど充実した設備に加え、ほかにないメキシカンハンモックが目を引いた。物件があふれる今、目を引くものがないとよい物件を作っても埋もれてしまう。充実した設備仕様に加え、とがっていることが大事だ」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら