映画「この世界の片隅に」配給会社のこだわり 株価は5割増の爆上げ、東京テアトルの貢献
「パイロットフィルム(見本用の映画)を観て、可能性のあるすばらしい作品だと感じた。社内でぜひやろうという話になった」。
そう語るのは、東京テアトルの赤須恵祐・映画営業部長。映画の企画について知ったのは2013年のことだった。
自社映画館で片渕監督の過去作品『マイマイ新子と千年の魔法』の上映会を手掛けた際、片渕監督から社内の担当者経由で話があったという。
当時、片渕監督と映画プロダクション会社は『この世界の片隅に』の出資企業と配給会社を探していた。東京テアトルが出資と配給の双方に手を挙げた理由について、赤須氏は「作家性を重視して決断した」と振り返る。
映画関連の中でも配給事業に注力
最近のヒット映画は、テレビ局が製作し、映画大手が配給する作品が多く、ミニシアター上映から始まるインディペンデント系の映画会社は苦戦が続いている。そうした中、テレビ局とのタイアップではなく、あくまで監督や脚本家の企画を尊重するのが、同社のいう“作家性の重視”。東京テアトルが一貫してこだわってきたスタンスだという。
これまでも、その姿勢で『ディストラクション・ベイビーズ』『人のセックスを笑うな』『南極料理人』といった話題作の配給を手掛けてきた。
1946年創業で、映画興行が祖業の東京テアトルだが、映画産業が右肩下がりとなる中、近年は不動産や飲食事業が収益柱となっている。そうした中、映画関連事業で注力しているのが配給である。
「今はシネコンが乱立して映画館が飽和状態。興行については急拡大が見込みにくい。一方で配給については、いい作品は口コミで広がる傾向があり、可能性は大きい」と東京テアトル広報担当の新井勝晴氏は語る。
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