【産業天気図・石油・石炭製品】価格転嫁進み利幅改善、ただ、原油価格高騰続けば「晴れ後曇り」の可能性も
08年4~9月 | 08年10月~09年3月 |
2008年度前半の石油業界を取り巻く収益環境は「晴れ」に転じる見通し。石油精製・販売事業で原油高の給油所などへの価格転嫁が進み、利幅が改善に向かうと見られるためだ。同年度後半も「晴れ」の天気が続きそうだが、あくまでも油価の安定が大前提だ。
業界最大手、新日本石油<5001>の今09年3月期経常利益(会社計画)は前期比約53%減の1300億円と半減する見込み。前期1679億円の水準に膨らんだ在庫評価益が大幅に縮小するのが主因だ。
同社は原油の在庫評価に総平均法を採用。油価の上昇時には期初の安値在庫を原価に含むため、利益がかさ上げ(在庫評価益が拡大)される。前期初めの中東ドバイ原油相場は1バレル60ドル台。期末には98ドル台にハネ上がった。これに対して、09年3月期の油価前提は95.8ドルと、前期比では18.8ドルの上昇を想定するが、在庫評価益は100億円程度にとどまりそう。騰勢に歯止めがかかり、価格は落ち着くと見ているわけだ。
在庫評価の影響を除いた「真水」ベースの経常益は同11%増の1200億円と実質増益の見通しだ。油価上昇に伴う石油・天然ガス開発部門の利益が拡大。石油精製・販売部門の利幅改善も進みそうだ。
ただ、想定に反して原油相場の右肩上がりの前提が長期化すれば、石油製品・販売部門で川下への転嫁にタイムラグが生じ、「真水」の利益を圧迫する可能性もある。
「東洋経済オンライン」では新日石の同期経常益について会社計画を上回る1450億円と予想しているが、出光興産<5019>の経常益は780億円と会社予想(880億円)未達を見込む。これは主として原油在庫の評価方法が両社で異なることに起因するものだ。
出光興産は「後入れ先出し法」を採用しており、在庫評価の影響が出ない。つまり、会社の実力が見掛けの利益へストレートに反映される。
同社の原油価格前提は中東ドバイ原油で1バレル95ドル。新日石と同様、足元の価格を大幅に下回る。東洋経済ではいずれも「保守的」と判断し、出光の場合には会社の想定ほど石油製品の利幅改善が進まないと結論づけた。一方、新日石も「真水」の利益には下振れの公算があるものの、原油高で在庫評価益が膨らみ「見掛け」の利益を押し上げる、との見方に基づき、前出の予想数字をはじき出した。
原油市場では中長期の需給逼迫観測を背景に先高感が支配的。このため、石油業界には「雲り空」が一気に広がるシナリオも否定できない。
【松崎 泰弘記者】
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