IT企業が人工知能の枠組みを提供するワケ 深層学習はビジネスをどう変えるか?
そして、ユーザーがロックを解除して最初に出た画面にある検索窓に自分の知りたい情報を打ち込むと、グーグルはそのユーザーの性別や年齢、現在位置、時間帯、知りたい情報、興味を持った情報といったすべての情報を取得して自社の人工知能に学習させ、世界のどの会社よりも進んだ人工知能を開発できるというわけです。
マイクロソフトやアマゾンが考えていることはもっと露骨で、深層学習の研究者や開発者が自分でコンピュータを組み立てるのではなく、クラウド上にコンピュータを設置し、学習に使うときに自社のフレームワークを使っていればより高速に効率的に学習が進むのだということを喧伝しています。グーグルも同様のクラウド学習プラットフォームを構築し、TensorFlowを使うとほかのどの方法よりも効率的に学習ができると喧伝しています。フレームワークを無償で配り、イニシアティブをとったうえで、本格的な学習をしたいなら、うちのサービスを使ってください、ということです。
大手4強とは異なるAI戦略の和製ベンチャー
こうした流れの中で、唯一異質なのはPFNの配布するChainerです。PFNはこうしたクラウドプラットフォームを一切持っておらず、当然、Chainerのユーザーが増えてもPFNに直接的な利益が落ちてきません。
しかし同時に、Chainerが国内外で広く使われることで、一介のベンチャー企業であるPFNは、グーグルやマイクロソフトと機械学習の分野においてはひけをとらない存在として認知されることになります。そうして認知されることは、優秀な社員を採用するときに非常に役立つのです。
国内ではほかに、さくらインターネットも「高火力コンピューティング」という深層学習向けのクラウドプラットフォームを構築しており、PFNやドワンゴもこのプラットフォームを採用しています。
一方、国内でAI分野に積極的に投資を続ける企業としてトヨタがあります。
トヨタは人工知能研究のための新会社トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)を設立、グーグルのロボティクス部門のトップだったジェームス・カフナーをはじめ、機械学習でDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)のプログラムマネージャー経験者など、そうそうたる顔ぶれで全米に研究組織を展開しています。
このような具合に、AI分野の戦いは、わかる人にはわかる水面下で、すでに火花を散らし始めています。市場を俯瞰する目線を少し変えるだけで、この先5年、10年で人工知能によって起こる変化をとらえることができるのです。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら