「介護疲れ」を脱却する親の本音の聞き出し方 「生かすこと」が目標になってはいけない

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「歩けるようになりたい」というのは本来目標ではありません。歩けるようになって何をしたいのか、歩く先に目標があるのです。その目標を見失って、義務のようにリハビリに取り組んでしまえば、親子にとって貴重な人生の終盤が、彩りのない灰色の日々になってしまう危険性があります。

義務の介護は親にとっても子にとってもストレスとなります。だからこそ、親の本音や希望を知り、それに沿った介護をすることが、介護ストレス解消に必要なことなのです。

親の本音を引き出すテクニック

それでは、親が子に遠慮してなかなか言い出せない本音を、どう上手に引き出せばよいでしょうか。望みを聞き出すいちばん簡単な方法は、直接本人に尋ねることです。真剣に正面から向き合うことからすべてが始まります。

それでも「特にやりたいことがない」「早くお迎えが来てほしいだけ」などと答える親が多数でしょう。ですがこれは遠慮であり、本心ではありません。「やっぱりこの答えが返ってきたか」というくらいの気持ちで受け止めてあげてください。そのうえで以下の「親の望み発掘法」を実践していきましょう。

まずは「子どもの願いは断りにくい」という親の弱みを突くこと。親にとって子どもはいつまでたっても子どもです。長年にわたって世話をしてきた子どもです。親はいつまでも「子どものために何かしてやりたい」と思っているものです。「お母さん・お父さんのために何かしたいから、やりたいことを考えてみて」と“お願い”してみましょう。同様に、「私がお蕎麦を食べたいから、一緒に行かない?」と、自分の望みとして誘うことも有効です。

第2の「親の望み発掘法」、それはアルバムを見ながら昔話を聞いてみることです。あえて聞き出さなくても、普段の会話を注意深く聞いていると親の望みが隠れていることがあります。特に昔の話にはヒントが多い傾向があるので、一緒にアルバム整理をしてみるとよいでしょう。

チャレンジ精神にあふれた欧米人は「やり残したこと」を積極的にやりたがる傾向がありますが、日本人の高齢者には未経験のことにチャレンジしたいと考える人は多くありません。「もう一度、あの景色が見たい」「もう一度、あの人に会いたい」など、過去のいい想い出を追体験したいと希望するケースが大半です。写真を一枚一枚見ながら親の人生をたどることで、大好きだったことや幸せを感じた場所がわかってくるでしょう。

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そして第3の「親の望み発掘法」は、親の「NO」を時には無視すること。苦痛の有無や健康状態への影響について医師やリハビリスタッフから「問題ない」というお墨付きがもらえ、本人も本当は好きなはずと確信できるなら、勝手に計画を立てて強引に連れ出してみてください。

「気が進まない」「また今度」などと本人が言っても、無視するのです。一見、乱暴に思えますが、これは親の望みを発掘するうえでとても効果の大きい方法です。親の「NO」は多くの場合「やりたくない」ではなく「迷惑をかけたくない」という意味です。そのため言葉どおりに受け取っていては、してあげたいことが何もできないかもしれません。

介護は悲劇ではありません。親と子が心を通わせることで、親の「生きがい」や「最期の願い」を実現できる、大切な時間になるはずなのです。

中村 祐介 理学療法士/あらたか社長

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なかむら ゆうすけ / Yusuke Nakamura

株式会社あらたか 代表取締役社長
2000年に理学療法士の国家資格を取得後、病院のリハビリテーション科に勤務し、急性期から維持期までのあらゆる疾患や障害のリハビリテーションに携わる。その後、理学療法士として経験できるすべての臨床現場を経験し、見えてきた医療や介護制度のあり方、サービス水準などに疑問を抱き、26歳のときに有限会社あらたか(現株式会社あらたか)を設立。現在は大学で経営学を学び医療、介護業界における新しい経営のあり方についても先進的に取り組んでいる。
 

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