「カストロ後」のキューバを襲う変化の荒波 革命の理想を貫いた国はどこへ向かうのか

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革命政府が目指した平等主義は、「搾取をしない」という決意のもと、雇う側と雇われる側、つまり労使関係を作らない社会システムを構築した。その結果、製造業など国を支える産業は育っておらず、生活必需品も食料も多くを輸入に頼っている。懸命に働いても賃金が上がらず、賃上げ交渉もできない。「オール公務員」の制度ゆえ、どんなに頑張っても賃金が「平等」のため働くモチベーションも上がらない。

加えて革命以前から、キューバは砂糖の生産など単一栽培に大きく依存した「モノカルチャー経済」に頼ってきた。その構造は社会主義になっても変わらず、相場の不安定さに振り回される状況に陥っている。

フィデル氏の死が意味すること

「この経済状況は何とかして変えていかねばならない」。そんな思いをキューバの政府も国民も共有している。ところが、富を平等に分配する社会主義の理想とぶつかり、変革が遅々としたペースで進む中、待ちきれずに国外へ亡命したり、移住を企てたりする人が引きもきらない。

そんな歯がゆい思いを抱えるキューバの人々は、突然の「フィデルロス」に動揺を隠せないでいる。

「覚悟はしていたけれど、いつまでも生き続けるイメージだった。アンチや敵からも一目置かれ、人々から尊敬を得る、そんな大きな存在を失うなんて信じられない」と、30代写真家のアンヘルさんは話す。40代のミュージシャン、ルドフォさんも、「いいことも、悪いことも含めて生まれたときからずっと一緒に歩んできた人。悲しいとしか言えない」と肩を落とす。

奇しくも11月25日は、キューバ革命の最中、フィデル氏が亡命先のメキシコから、ゲバラ氏など仲間とともに、「グランマ号」でキューバに向かった記念すべき船出の日。その日、若きフィデル氏が胸に抱いた平等への理想を噛み締めながら、「変わるべきとき」を迎えるさびしさを、多くの人が実感しているのかもしれない。

斉藤 真紀子 ライター

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さいとう まきこ / Makiko Saito

日本経済新聞米州総局(ニューヨーク)金融記者、朝日新聞出版「AERA English」編集スタッフ、週刊誌「AERA」専属記者を経てフリーに。ウェブマガジン「キューバ倶楽部」編集長。共著に『お客さまはぬいぐるみ 夢を届けるウナギトラベル物語』

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