「カストロ後」のキューバを襲う変化の荒波

革命の理想を貫いた国はどこへ向かうのか

最高指導者の地位がラウル氏に移った2008年から、キューバは新しい経済政策を次々と取り入れてきた。それまで許されていなかった自営業を拡大し、不動産の売買も始まった。インフラはまだ発展途上だが、有料Wi-Fiも普及してスマートフォンを使う人も増えた。「今のキューバがもはや革命世代の『古典的な論理』では動いていないことを示している」(工藤氏)。

すでに85歳になるラウル氏も2018年には退任する意向を示しているが、後継者はキューバ国家評議会第一副議長兼閣僚評議会第一副議長のミゲル・ディアスカネル氏が有力視されており、「革命の成果を残しつつ、経済改革を行っていく」、今の路線を継いでいくと思われる。

理想主義の甘くない現実

約60年前のキューバ革命後、チェ・ゲバラ氏らと共に打ち立てた社会主義政権は、無償の教育や医療を国民に提供するなど、理想主義的な経済システムを作り上げた。それまでの親米独裁政権で拡大した、貧富の格差を解消するためだ。この革命で得た「成果」は残しつつ、現実的な経済運営に舵を切っていくというのが、ラウル氏の方向性だ。

だが、現実は甘くない。今や国民の半数は「革命を知らない世代」だ。社会保障制度が充実しているとはいえ、一般市民の平均月収は2015年時点で687キューバペソ(キューバ国家統計局調べ)で、米ドル換算すると約25ドル(約2800円)ほど。生活必需品や食料などをまかなうことができず、人々の暮らしは困窮している。ゆえに、深刻な経済状況が続く中、中国のような市場経済の導入や、「アラブの春」のような急激な民主化の動きにつながっていくことはないのか。 

「フィデル氏が去ったからといって、政府の求心力がなくなり、社会主義システムが崩壊することはないだろう」。そう話すのは、現地の事情に詳しい旅行代理店トラベル・ボデギータ代表の清野史郎氏だ。

「今のキューバには、ミャンマーの(国家顧問兼外相)アウンサンスーチー氏のような民主化のリーダーはおらず、米国に支援された一部の活動家がいるだけ。(キューバ)国内で話題にもならない。一方、共産党一党独裁体制を変えるには憲法改正が必要で、これには時間がかかる。経済面では、軍がホテルの経営などを巧みに行って観光産業に力を入れ、外資による投資比率は政府がコントロールするなど、自前で経済のテコ入れを図っている。一挙にグローバリゼーションの波が押し寄せるとは考えにくい」

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