(最終回)温暖化が変える「働く姿」~ビジネスパーソンのキャリアが変わる
末吉竹二郎
●温暖化を解決するのはビジネス
「最後の木が死に、最後の川が毒され、最後の魚を採ったとき、人はお金を食べられないと気づくのだ」。19世紀のアメリカ先住民の語ったこの言葉を、私はビジネスを考えるたびに思い出します。温暖化や環境破壊など地球規模の問題が危機的な様相を示し、有限な資源がなくなる危険が出始めています。資源を大量に浪費して利益を追い求める今の経済システムを続けた場合には、この言葉通り「最後」の状況が現れるかもしれません。
そうした流れを転換させる「CO2本位制」という経済体制が作られつつあること、そして「CO2を出すのは悪いこと」という価値の転換が始まっていることを、この連載で読者の皆さんとともに考えてきました。そこで見えたのは温暖化をはじめとする多くの地球規模の問題の解決の担い手として、ビジネスが世界から期待を集めていることです。人材や持てるお金の力、そしてノウハウがあるためです。複雑かつ広い地球規模の問題を解決するには、国や国際機関などの公的部門の力だけでは足りないのです。
しかし、その解決は今までのビジネスの姿では成し遂げられません。新しいルールの下で行われなければならないのです。そして、そこで働く人々が「温暖化を止める」という新しい価値観の下で行動を始めることが必要になっています。
●やがて来る低炭素社会の姿とは?
「規制だらけの社会が生まれるのではないか」。「ビジネスがしづらい世の中になるのではないか」。これから誕生することになる「低炭素社会」に警戒感を持つ人がいるかもしれません。しかし、私は暗いものになるとは考えていません。エネルギーの無駄がなくなり、次の世代が直面する不安を取り除く努力が喜びになる。価値観の転換に伴って、こうした変化を自然と受け入れることになるでしょう。そして10年ほど経つと、「なぜこんなに無駄があふれていたのだろう」と現代社会を振り返るときが来るのではないでしょうか。スマートな経済を作る。それは快い姿になるはずです。さらには持続可能な経済を作り上げれば、未来への不安はなくなります。その担い手はビジネスパーソンです。
そして社会の動きに応じることは、ビジネスチャンスを広げます。政策、商品開発、金融などで起こる劇的な変化にいち早く応じることができれば、お客さまと社会の支持を受け、ビジネスパーソンの「成果」にも結び付きます。
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