人事部を襲う「悪夢のような変化」とは何か? 「自由な働き方」を求める声はますます高まる

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なぜこのような変化が起こるかというと、長寿化時代を過ごすため、個々人には3つの「無形資産」を貯めるインセンティブが高まるからです。無形資産は、大きく次の3つに分けられます。

長寿化時代に求められる無形資産1:生産性資産

仕事の生産性を高め、所得を増やすのに役立つ資産。スキル(技能)や知識など。

長寿化時代に求められる無形資産2:活力資産

肉体的・精神的な健康と幸福のこと。心身の健康や良好な友人・家族関係など。

長寿化時代に求められる無形資産3:変身資産

100年時代を生きるために、自分を大きく変身させるのに必要な資産のこと。自分自身についての深い知識や、多様性に富んだネットワーク、オープンな態度を持っていることなど。

実際、私自身も、2012年末に『ライフ・シフト』著者、リンダ・グラットン教授の前著『ワーク・シフト』と出会い、それまで10年近く住んでいた会社の徒歩圏内の住居から、湘南茅ケ崎に引っ越しました。この判断は、私に非常に多くの恩恵をもたらしました。

往復3時間の通勤中の読書で「生産性資産」を高めることができました。徒歩3分の海で行うサーフィンや釣りは非常に効率的なリフレッシュとなり、私の重要な「活力資産」になっています。結果的に、都内在住の時よりもハードワークが可能となりました。

画一的な管理型人事をやめよう

私のような「自由な働き方」を求める機運は、今後ますます高まっていくはずです。ここに、企業人事の「悪夢」があります。

従来の企業人事は、運用が簡単で単純な、予測可能性の高いシステムをベースに人事制度を作り上げてきました。日本の年功序列型の組織や新卒一括採用、終身雇用などは当然のこととして、アメリカの(実際は日本の1.5倍にもなる4.6%の失業率を生み出している)短期的な実力・成果主義や過度な高額報酬などもそのひとつです。

これから訪れるマルチステージ化された時代においては、これらの予測可能性を前提とした画一的な人事システムは機能しなくなり、より柔軟な選択肢を求める個人の欲求に対応せざるをえなくなるのです。

すでに感度の高い一部の企業では、従来の画一的な雇用形態、労動環境、雇用条件などを、より優秀な人材を獲得すべく、試行錯誤しながら進化させています。それは単なる「兼業可能」や「フレックス勤務可能」というレベルではありません。たとえば本書で言う、さまざまな仕事や活動に同時並行で携わる「ポートフォリオ・ワーカー」や、選択肢を狭めず幅広い進路を検討する「エクスプローラー」に対応するための採用手法や労働環境の整備も、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら進めています。

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