「寝ても疲れが取れない人」に迫る体の危険 睡眠時無呼吸症候群を疑ってみよう

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そのようなCPAPをつけて眠れない方に歯科でできる睡眠時無呼吸症候群の治療方法としてマウスピース療法があります。

マウスピース療法は、すべての方に適応というわけではなく、中等度程度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の方に効果があるといわれています。体質改善などの原因療法とともにマウスピース療法を行っていくと、多くの症例で改善が見られています。

まず耳鼻咽喉科、呼吸器科、睡眠外来のある神経内科等で受診します。検査診断後マウスピースが必要とされた場合、医科からの紹介により歯科にてマウスピースを作製します。

スリープスプリントの効果は?

スリープスプリントと呼ばれるマウスピースを就寝時に装着します。スリープスプリントは、下あごを少し前に出した状態に誘導することで、下あごや舌が後ろに下がることを防ぎ、気道を確保した状態になり鼻呼吸を促進します。SASだけでなくいびき対策にもつながります。

作製回数は2~3回かかります。健康保険が適用になりますが耳鼻咽喉科等の診療情報提供書、マウスピース作製依頼書が必要になります。金額は3割負担の方で1万円程度です。依頼書等がない場合は自費診療となり3万~5万円程度です。

スリープスプリントは個人の歯型に合わせて製作し、始めはあごの痛みや違和感がありますが、数カ月の使用で徐々に慣れてきます。総入れ歯や、ひどい顎関節症の方は使用できないこともあります。マウスピース療法は、CPAPに比べると比較的手軽な方法であると思われます。気になる方は担当の専門医にマウスピース療法の適応かどうかしっかりと相談してみる必要があります。

睡眠時の姿勢も睡眠時無呼吸症候群に関係があります。仰向けで寝ると重力の影響で舌が奥に下がりやすいです。一方、横向きで寝ると気道の閉鎖を軽減させる場合があります。

アルコールの摂取にも注意です。寝る時はただでさえ筋肉が緩んでいますが、アルコールの影響でさらに筋肉を緩ませることになります。お酒を飲んだ日にいびきをかいてしまうという経験がある方は、これが当てはまります。寝る前に水を飲む、寝酒は控えるということがリスクを減らすことにつながります。

太り過ぎも原因になります。首や喉周りに脂肪が付くことと大きくかかわるので、適正な体重を維持すること。治療のひとつとして痩せることも挙げられます。口呼吸にも注意です。鼻呼吸よりも気道が閉鎖しやすい状態になるからです。鼻炎などの症状がある場合も口呼吸になりやすい傾向にありますので、耳鼻咽頭科の受診をおすすめします。

睡眠時無呼吸症候群は本人が気付いていないケースも多々あるようです。放っておくと日常生活に支障をきたすだけでなく、生活習慣病や死に至る病気にまでつながるおそれもあります。いま一度生活を見直す機会をぜひ作ってみてください。

小林 保行 歯科医師/キーデンタルクリニック院長

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こばやし やすゆき / Yasuyuki Kobayashi

2004年東京歯科大学歯学部卒業、表参道の総合歯科医院に勤務。2006年市谷の歯科医院にて副院長として勤務。2008年に赤坂見附駅から徒歩1分の場所にキーデンタルクリニックを開院しました。開院以来、「確かな技術で納得の治療を」モットーに、あごや歯の場所を細かく分析をし、歯だけでなく口回りを総合的に診断。現在はムシバラボというサイトを立ち上げ、歯や口周りの情報を発信。主な資格はDHA岩田セミナー認定医、総合治療セミナー「一の会」認定医、クリアアライナー矯正認定医、日本顎咬合学会所属、日本インプラント学会所属、消防庁認定、救命技能講師修了。

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