「合理的」投資家に告ぐ、情報カスケードにご用心
ここまでの分析を株式市場に当てはめてみよう。Aを「売り」、Bを「買い」とする。こう考えると、市場全体では買い情報(株価が上がりそうな好材料)を得ている投資家のほうが多かったとしても、いったんできてしまった売りの流れにより、残りの投資家が売りに殺到するという群衆行動が生じうる。
こうして起こる投げ売りの結果、短期的に、株価は暴落する。逆に、買いの流れが起これば株価は急騰する。
情報カスケードを踏まえると、新たな情報が少数の参加者に伝わることで、群衆行動の流れが一気に変わる、といったことも起こりうる。つまり、ある情報を得た参加者の行動に倣えとばかり、株価の乱高下が起こるような事態を説明できるのだ。
このような現象が導かれるのは、個々の投資家が他の投資家の得た情報を直接観察することができないからだ。彼らは、お互いの売買行動や市場価格から間接的に情報を推測するしかない。
こうした状況では、投資家が〝合理的〟であるにもかかわらず、いや、〝合理的〟であるからこそ、皮肉にも市場全体が間違ってしまうのである。
【初出:2013.6.15「週刊東洋経済(起業100のアイデア)」】
(担当者通信欄)
ランチのお店選びにしても、同じビルの中、同じフロアにあるお店を見比べて、あまりに混み具合が違うと、空いているほうのお店をなんとなく避けてしまったり。何度も通っている信頼できるお店だったらまた違ってもきますが、情報が少ないほど、ひとに引きずられがちというのは、お店選びのほかにもよくある話です。すいているという理由でお店を選ぶ場合もありますがそれについては、ぜひ同シリーズのこちらの記事もご覧ください→【ラーメン・ディズニー・ネスプレッソの秘密】
さて、安田洋祐先生の「インセンティブの作法」最新記事は2013年7月8日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、セブンの磁力)」に掲載です!
【3点シュートの罠に学べ、マクロを動かす「ミクロ」】
6月末にバスケットボールの全米チャンピオンを決定するNBAファイナルが開催されました。今年は最終第7戦までもつれこむ大接戦だったとのこと。今回は、このNBAが94~95シーズンに行っていた興味深い「ルール変更」を例に挙げ、話を大きく広げて「減税」、経済学における「政策変更」を考えます!
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