株式投資の「空気を読む」に潜む罠とは?

「情報カスケード」の発生、群衆行動が誤る日

賑わっている店を選べ!多数決なら間違いない?

株式市場のことはしばし忘れて、まずは、次のようなストーリーを考えてみよう。

ある通りに、2軒のレストランA、Bが隣り合ってオープンした。新しい店で食事をしようと、この通りを訪れる客は、1人ずつ順番にやってきて、A、Bどちらかを選んで入っていく。店に入る前に客同士が接する機会はない。客はあらかじめ、どちらの店のほうがおいしいかについて独自に(不完全な)情報を得ており、決定にあたって、自分の情報と他の客の情報を総合する。

ここで、自分がおいしいほうの店に入る確率をできるだけ高めようとする〝合理的〟な客について考えよう。この客にとって、よりおいしい店はAであるという情報の数が、Bであるという情報の数を上回ればAを、逆であればBを選ぶのが最適だ。同数だった場合には、自分が得た情報に従ってお店を選ぶとする。

この最適な判断に必要な情報はどうやって集めればよいだろうか。他人の持つ情報を直接見ることはできない、という点がミソだ。他の客がどちらの店を選んだか、その選択の結果から、背後にある情報を読み取ることがカギになる。

最初の客については単純だ。観察できる他人の情報がないので、自分の持つ情報がA(のほうがおいしい)であればA、BであればBを素直に選ぶのが最適な選択行動になる。

2人目については、1人目の行動を観察できるため、2人分の情報から意思決定を行うことになる。ただし先ほどの仮定のとおり、2人の得た情報が食い違い、1対1の同数となれば、自分の情報に従う。

結局、2人の情報が同じでも、違っても、1人目の客の行動に関係なく、自分の情報だけを基にして店を選ぶのと同じことになる。

3人目からは少し複雑だ。もしも自分より先に訪れた2人が違う店を選んでいたとすると、それは彼らの得た情報が異なることを意味するため、判断材料としては参考にならない。この場合、自分の情報にそのまま従うのが最適となる。

興味深いのは、前の2人が同じ店(たとえばA)を選んでいるようなケースだ。このとき2人は、Aという同じ情報を得ていたことになる。すると、自分の情報がAとBのどちらであったとしても、多数決の結果はAとなるので、3人目はAを選ぶ。

つまり、自分の情報を結果的に無視して、前の客たちの行動を真似ることになってしまう――これを「情報カスケード」と呼ぶ。

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