株式投資の「空気を読む」に潜む罠とは?
「情報カスケード」の発生、群衆行動が誤る日

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「最初の2人がたまたまAという情報を受け取った」

レストランの評判を事前に得ていても、それを無視して賑わっているほうに並んでみたり。(撮影:風間仁一郎)

一度情報カスケードが発生すると、それ以降の客も同様に、自分の情報を捨てて前の客の行動に合わせるため、混んでいるレストランにはどんどん客が入っていくようになる。

このストーリーでは、情報カスケードによって引き起こされる群衆行動を、〝合理的〟な参加者たちの意思決定から導いている。ただし、ここでいう合理性とは、あくまで個人が自分の満足度(おいしい店を選ぶ確率)を最大化している、という意味での合理性であって、全体として望ましい結果が実現することを保証するわけではない。

この点を、先ほどの例を振り返りながら確認しておこう。最初の2人がAを選ぶと、3人目以降は自分の情報を一切参考にせず、Aを選び続ける。つまり、3人目以降の行動には、彼らが得ていた情報がまったく反映されなくなってしまう。

見方を変えると、たとえ客が全員レストランAを選んでいたとしても、そこから読み取ることができるのは、「最初の2人がたまたまAという情報を受け取った」事実にすぎないのだ。

極端にいえば、3人目以降のすべての客が、Bの方がおいしいという情報を得ていたかもしれない。この場合には、実際にはAではなくBのほうがおいしい可能性が高い。つまり、もしもすべての客が得た情報を観察することができるなら、全体としての最適な予想はBとなる。

にもかかわらず、(正しい情報を知らない)客はBではなくAを〝合理的〟に選び続け、結果として、全体としては〝非合理〟に見える群衆行動が発生する。まずいレストランに行列ができる場合もあるのだ。

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