円高にこだわると、いつまでも間違える理由 トランプ政権はアベノミクス再起動に追い風

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金融政策に加えて、Brexit(英国のEU離脱)、米大統領選挙という大きな政治イベントを挟み、ドル円相場の方向は複雑になっていた。ただ、先に述べたドル円の方向を決する基本的な枠組みを冷静にみることが肝要ということである。

そう考えれば、トランプ新政権によってドル高が進むのは自然である。トランプ氏はさまざまな政策メニューを掲げているが、経済成長率にダイレクトに影響する減税政策については共和党の方向と一致している。また政策の中身も具体的であり、予想することは難しくない。

当社のエコノミストは、2017年の米国のGDP成長率は少なくとも0.5%押し上げられ、3%近い成長率を想定している。足元で賃金上昇率もついに高まっており、成長率が加速すれば、FRBが利上げを躊躇する方がむしろ問題になる。債券市場において、金利水準が大きく上方シフトしているが、これは経済・金利水準の正常化に過ぎないと筆者はみている。

もちろん、トランプ氏が掲げる保護主義的な貿易通商政策、移民政策は、貿易相手国だけではなく米国経済にも悪影響を及ぶす愚策であると考える。こうした政策は、それが行き過ぎれば、世界経済全体に悪影響が及ぶリスクがある。また、過激な発言を繰り返したトランプ氏が繰り出す外交政策もリスク要因になりうる。ただ、貿易・移民政策は3年以上の期間で経済成長率に影響する政策であり、金融市場への影響については、タイムスパンをしっかり分けて考える必要がある。

いずれにせよ、「トランプ祭り」でドル円相場は1ドル110円台まで急ピッチで円安が進んだ。目先は、トランプ政権の人事や方針を巡る報道で、ドル円や日本株にスピード調整もありえるだろう。ただ、2017年にかけては、金融市場はトランプリスクへの恐れが修正される方向に動く、と筆者は予想している。

米国の財政政策転換が他国の財政政策に影響も

最後に日本の金融市場への影響について言えば、円高の修正が日本株高をもたらすことでダイレクトに影響するのは言うまでもない。もう一つ重要な視点は、トランプ新政権がアベノミクス再起動をサポートする側面である。つまり、同政権は減税を中心に拡張的な財政政策に転換する可能性が高い。オバマ政権は2009年に誕生したが、2011年以降、米国経済は緊縮的な財政政策が続き、これが成長率を抑制し、FRBによる金融政策正常化の大きな障害になっていた。

経済成長率を高めるマクロ安定化策として財政政策の重要性が、米国のアカデミックや当局者の議論の中で高まっている。今年夏場まで、安倍政権が、財政政策という第2の矢をようやく正常化させたことで、ヘリコプターマネーへの期待が高まった局面があった。

米国の財政政策の転換は、各国の財政政策の判断に影響する可能性がある。安倍政権は一足早く緊縮的財政政策を強要する勢力からすでに距離を置いているが、この動きは一段と強まる可能性がある。財政政策のギアチェンジによる成長押し上げが、2017年のアベノミクスの再起動をもたらすシナリオの可能性は高まったと考えている。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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