白熱教室:灘高はリスニングをこう教えている

日本の英語教育を変えるキーパーソン  木村達哉(下)

次はペアになります。ここは立ってやりましょうか? また速読みしますが、3回先に読み終わった人は、相手のスクリプトを取り上げてください。そして、相手をじっと見つめて「遅い!」と言ってあげてください。

楽しくなってきたでしょ? うちの生徒たちはリアルにスクリプトを奪い取ります。そして、ホンマに「遅い!」と言い放ちます。

2回戦、3回戦とやりますが、3回戦が本番です。ここで負けると罰ゲームをしてもらうことになります。生徒たちにはスクワットさせますが、ここでは敗者が勝者の肩をもんであげてください。

今、みなさんは30回近く、速読みをしました。このあともう1度CDを聞くと、かなりゆっくりに聞こえるはずです。今、みなさんの心地よい速度がかなり早いものになってきたんですね。

今、やったのは問3のスクリプトです。実は問1、2もあるのですが、50分の授業ではこれ全部はできません。なので問1、2は家でやってくるようにさせています。家で全部をやる時間がなければ、最初に1回聞いて、単語を覚えて、音読トレーニングは速読みだけでもいいです。

じゃあ、授業は終わりますけれども、顔を上げてください。「ワーオ、何のためにそれを作ったの?」はいスクリプトを見ずに英語で言ってください。「実はね」、英語で言ってください。次、「私の女友達が入院中なのよ〜」を英語で。

つまりリスニングの授業だったのですが、最終的にはライティング、スピーキングのトレーニングにまでなっているのです。聞いているだけでは英語力全体は上がらないですから、音読をやり、願わくは最後に暗唱までいければ、理想的だなということです。

今日やって、明日、あさって、しあさってやらない、その次の日やるというは、よくありません。ですから僕は、次の授業でやるリスニング問題は数個先のものになるようにして、授業でスキップする問題は、毎日1問ずつ自宅でやらせています。そして、自習する問題に関してはディクテーションシートを配っておいて、次の授業で提出させます。さらに音読トレーニングをちゃんとやってきたかを試すために、全訳を見ながら紙にスクリプトを書いてもらうテストも課していました。

生徒は「地獄や」とか言っていますが、毎日ひとつのスクリプトを読むなんて、そんなに大したことではない。

1学期はリスニングですよ、というのはどういうことかというと、毎日なんらかのスクリプトを暗唱している感じになります。この積み重ねが、英作文やスピーキングの力につながっていくと思っています。

リーディングの授業もリスニング中心で

次はリスニングを中心にしたリーディングの授業です。僕は長文を読む/聞くと気絶してしまう子たちをどうにかしたくて、長文リーディングの教材を使っています。

ただし、センター試験のリーディングはたかだか200ワードぐらいしかありません。時間にすると1分前後で読み終わってしまう長さです。ではなぜ長文をやるか? それは、彼らが大学に入ってからのことを考えているからです。

木村達哉/きむらたつや
灘中学校・高等学校英語教師
『夢をかなえる英単語 ユメタン』(アルク)『夢をかなえる英文法 ユメブン』(アルク)『キムタツ式英語長文速読特訓ゼミ』(旺文社)『灘校生が実践しているTOEICTEST900点を当たり前のように取るためのパワ フルメソッド』(角川書店)など英語学習書の著書が多数ある。また、英語学習にまつわる講演を全国で積極的に行っている。オフィシャルサイトでは、日々の 活動や英語指導者向けのアドバイスなどを網羅したブログも更新中。

特に英語を使うのは、文系より、理系に行く子たちです。理系では英語で文献をたくさん読まされるし、学会で英語の発表をする場面だってあるかもしれません。それに比べて文系はあまり英語を使わないです。僕は今、高3を受け持っていますが、理系のクラスの担任です。毎年、英語科は理系の担任と決まっているのです。

そんなわけで彼らが大学に入った後、あるいは社会に出た後に比較的長い時間聞ける、もしくはしゃべれるという力をつけてあげたい気持ちがあるのです。ちょっと長くなると気絶する“病気”を持つ子は灘高にもいましたから、ずっと対策を考えていました。

センター試験のリスニング程度なら9割ぐらい聞き取れるようになったら、多聴に移るべきでしょう。ただし、多く聞くといっても、CNNニュースなど、生徒の能力をはるかに超えるものをひたすら聞いていても、結局はほとんど聞き取れないことになる。多聴多読がいいのだと言っても、「聞けないな〜」「読めないな〜」と思って、また別のものを聞いても聞けない、読めない。これはいくら繰り返してもダメです。

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