白熱教室:灘高はリスニングをこう教えている 日本の英語教育を変えるキーパーソン  木村達哉(下)

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文型の構造は無視し、段落ごとに意味をとる

長い文章を読むときは、「この一文は第二文型」などと解説しても意味が入ってこないので、構造分析はしません。構造なんてわからなくてもいいから、 書き手が何を言いたいかを理解できればいいのです(もちろん、レベルによっては基本的な構造を教える必要もあるとは思います)。

要は、各段落で言おうとしていることの意味をとっていくようにすればいい。本来、ものすごく長い文章を読むときは、「この段落はいらないな」とか考 えながら読むわけです。日本語の論説文を読むときは楽勝です。岩波にしても講談社新書にしても小見出しがついていて、段落ごとに何が書かれているか、わかるようになっているからです。「この段落は興味ないわ」と思ったら、飛ばせばいい。

ところが生徒たちはパッと見て、「うぁ、こんな長いのを全部読むのか?」となりますので、この長文でも小見出しに該当する文章を太字にしています。 つまり各段落の第一文です。ここを中心に読んで、段落ごとの要約文の空欄に答えを入れていってください。次にこの文の各段落の要約を簡単にして、“読解” は終了となります。

高校2年生でこの教材は楽勝なんです。解説することがないから。わざと楽勝なのを選んでいるのです。問題はここからです。

また音読をしていきます。このとき、同時通訳的に意味をとりながらやっていきます。段落ごとにオーバーラッピング、シャドーイングをしていきます。何度も言いますが、音だけ追いかけてもしょうがないので、同時に意味もとっていきます。

リーディング用の教材のちょっとマイナスなところは、CD教材に段落ごとにトラックがついていない。だから、頭出し機能があるのが最高なんですよ。段落が終わったら、今度は300ワード全部通して聞きます。

長文は最初300ワードからスタートし、少しずつ増やしていきました。今は15分間聞けるようになりました。まあ、彼らは学会なんかでは90分とか 普通に聞くことになるでしょうから、まだまだ通過点ではありますが。とは言っても、学校英語という観点からすると50分の枠しかないので、この程度がいっぱいいっぱいかなと思います。

ボストンマラソンのニュース12分ぐらいだったら、クラスの全員が気を失わないところまでいきました。ここまで来るのに結構時間がかかりました。早さ対策はさっきの速読みをひたすらやり続けました。

生徒にはつねにこれを復習でやらせていました。つまり、音読トレーニングですね。僕のやることは簡単です。職員室に帰って、長文スクリプトについての復習テストを作って、次の授業でやらせるだけです。

僕がいちばん嫌いなのは採点なんです。なので、復習テストの答え合わせは生徒同士でやらせます。どんな内容かというと、段落すべての文をバラバラに入れ替えたり、誤文訂正をさせるなどです。

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