「成功の指標はひとつだけ。それは株価、市場の評価です」−−スチュアート・チェンバース 日本板硝子次期社長

--チェンバースさんのキャリア形成を考えると、10年の長期戦略に取り組んでも、10年後にこの会社にいるとは限らないのではありませんか。長期戦略を実行するインセンティブがありますか。それとも10年後も日本板硝子にいらっしゃいますか。

たいへんラッキーなことにわが社の10年の長期戦略は3フェーズに分かれています。だから、間に2回区切りがあるのでチャンスがないわけではない。ですからフェーズ1だけ私がやるかもしれないし、フェーズ1と2を私がやるかもしれない。場合によってはフェーズ3まで10年間、私が手掛けるかもしれない。これは私が決めることではなくて、取締役会の承認を経ることですから。ただ10年の長期戦略と申しましたが、すでに2年経っているわけです。フェーズ1が完了したときになれば、これまでの戦略がうまくいっていたか、判断できるようになる。成功を図る指標というのはただ一つだけ。06年6月よりも会社の価値が上がったかどうか、それだけだと思います。もちろん、これは株価です。われわれが決めることではなくて市場が決めることです。

--HOYAとの合弁会社で液晶用ディスプレイガラスを製造しているNHテクノグラスを手放します。その選択にはチェンバースさんはかかわっているわけですか。

もちろんです。売却の理由はわが社の戦略を見ていただければわかると思います。現在、フェーズ1の時期ですが、その大きな目標の一つは借入金の削減です。NHテクノグラスの市場というのはたいへんな成長市場です。利益率も高いので利益の面では問題なかったのですが、成長が著しく速く、技術もそれと同じように高度になっている。スクリーンサイズもドンドン大きくなって、工場の規模もさらに大きくしなければならなかった。ということはおカネをドンドン投資していかなければならない。それに反して、価格はどんどん下がっています。成長性もあるし、利益率も高い、しかし多くの資金がいる。もしわれわれがフェーズ2、3の段階にいたなら異なった判断をしたかもしれませんが、フェーズ1の現状では売却する判断をしました。

--日本板硝子の管理職を対象にした希望退職を行った理由は。

フェーズ1の優先事項はいくつかありますが、そのうちのひとつは日本の板ガラス事業の採算改善です。採算改善には三つの方法があります。間接費の削減、各工場の能率アップ、それとプロダクトミックス、利益率の高い商品を売る、ということです。間接費削減には人員の削減が必要です。間接費の7割は人件費ですからね。もちろん取締役会でも論議しました。日本で実現可能な対策としては唯一、自主的な早期退職優遇制度しかない、となりました。実際に発動しまして対象となる管理職は820人いましたけども、220人が応募してきた。結果として管理職の4人に1人、25%の人が退職を迎えることになりました。

--220人の応募は多かったですか。少なかったですか。

出原会長は、もっと少ないと思っていたかもしれません。私としても同じように少し多かったかな、と思っています。しかし、この数字はよい数字でありました。なぜなら、こういったことは、一回限りにしたい。こうしたことは会社として難しいことで、社員のモラールにとってもよいことではない。70人しか応募してこなかったということであれば、2~3年後に同じことをやる必要が再び出てきたかもしれない。よい数字と言ったのは、今回限り、今回ですべて完了した、ということです。二度とこういうことはしない。これからは成長のためにわれわれはエネルギーを注いでいく、という意味です。

--チェンバースさんが社長になる今期の日本板硝子は、営業減益予想です。来期以降は回復できますか。

2年後には回復します。11年3月期には08年3月期の業績よりよくなる。中期経営計画の目標営業利益550億円は必ず達成したい。達成できなかったら、私はCEOを代わってもらわなければなりません。
(山崎豪敏(編集長)、鶴見昌憲 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

スチュアート・チェンバース
1956年5月生まれ、77年ユニバーシティ カレッジ ロンドン卒、ロイヤル・ダッチ・シェル勤務などを経て96年ピルキントン入社、2002年ピルキントン社長。

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