「爆買い終了」でも続くインバウンドの真実 悲観論は「百貨店不振」に引きずられすぎ?

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また、三ツ星のレストランで豪華な料理を楽しむこと、表参道の美容室でカット、パーマ、そしてトリートメントまでしてもらうこと、店頭で漫画「ワンピース」や「ドラえもん」のグッズを購入すること、はたまた商店街での食事、花火大会、紅葉スポットの入園料等々……。これらは個別にデータを取らないかぎり、日本人による消費だとみなされることになる。

その結果、彼らの消費は「外国人観光客」「免税金額」の統計から消えてしまい、買い物行動も買い物金額も把握できなくなる。

そして、中国人訪日客の変化する消費行動のもう一つの特徴。それは、「小さい」である。つまり商品に好むサイズが小さく、求めるものがより細かくなっているのだ。

昨年と今年、10月の銀座は何が変わったか

筆者は10月の国慶節期間中、昨年と今年の同じ日に銀座を視察した。街で観光客が持ち歩くのをよく見かける家電量販店の袋だが、今年はサイズが明らかに小さくなった感じだ。中国系の家電量販店の店内に入ってみると、なんと、昨年は高級時計が占拠していた1階は、「ドラッグストア+美容家電」の天下となり、中国語での弾む会話が至る所から聞こえてきた。2階に上がると、今では高級時計や炊飯器コーナーは閑古鳥が鳴くありさまで、携帯魔法瓶や菓子のほうがずっと人気のようだ。

ここによく来るのは、爆買い行動の代表者である団体観光客だ。大型家電より、身近で手頃な価格の日用品に移っているのは、団体旅行者の消費行動を見ると、よくわかる。

中国人は、所得の増加に伴い、ブランド品はもちろん、値頃感がありながらも高品質な生活用品も求めるようになった。しかし、それを中国国内で買おうとしてもなかなか難しい。たとえば、同じ洗剤でも日本の3倍以上の価格設定になっていたり、アマゾンで3000円で買える携帯魔法瓶が北京のスーパーに行くと1万円以上したり、なんとガムテープでさえも上海では高級品になったりする。

そのため、中国に駐在する日本人は、帰省する際に服をまとめて買ってきたり、ベビー用品を数カ月分買って持ち帰ることや、日本出張する同僚に頼み日用品やお茶漬けパックを買ってきてもらったりすることは珍しくない。中国人は、それと同じことをしているのだ。彼らは、ブランド品より、もっと手頃な金額で日常生活の質を向上させたいと思っている。大きな家電もよいけれど、毎日使うティッシュや化粧品など、「小さな」ところで先進国並みの暮らしをしたい。そのニーズを満たしてくれるのは、日本での買い物だ。

それに、「よい物を安く買えた」といううれしさだけでなく、かゆい所に手が届くサービスや細かいところにまで配慮が行き届いている商品への志向も高まっている。訪日観光客を対象にしたインタビューで、雨の日に紙の買物袋に雨よけカバーをかけてくれることにビックリし、喜んだ人が少なくなかったことは、その一例だ。

あるいは、靴を試着するとき、ひざまずいてサイズを調整してくれる丁寧なサービスに「激しい感動を覚えた」と言う人も珍しくない。はがすときにまったく痛くない湿布や破れにくいストッキング、さっと化粧パフを洗える洗剤もそうだ。使ってみると、一見目立たない細部の作り込みが心地よく、「もう手放したくない」と観光客を魅了する。

この「小さくなった」消費志向に、「赤と金色が好き」「なんでも大きいサイズがいい」「目立つのが好き」というステレオタイプな中国人向けのマーケティングは通用しなくなった。そして、「何もしなくても勝手に売れていく」「日本製と表記すれば、ヒット商品にできる」「日本人にウケなくても、中国人には売れるかも」といった甘い考えも当然、時代遅れになっている。いかにニーズを追い、つかみ、リードするのか、それがこれからの課題だ。

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