ただし、注意点もある。今回の米大統領選では「異端の指導者」が選出されたわけだが、これは6月のブレグジット(英国のEU離脱)にも似た現象ともいえる。
これまでの慣習などに嫌気がさした有権者が、現状を変えるために行動したとすれば、それは新しいダイナミズムのうねりにつながるリスクがある。この流れが行き過ぎると、国際情勢の混乱や世界経済の停滞につながるリスクがある。またトランプ氏が打ち出す外交が、世界の枠組みや秩序を混乱に陥れる可能性は今後も否定できない。この点からも、当面は不透明感が高まる可能性はある。
ただ今回選出されたトランプ氏は、政治の素人である。これまでは、トランプ氏を支持していると公言するのははばかられたが、いまやトランプ氏は次期大統領だ。トランプ氏をサポートすると公言することは、国家に貢献することになる。
もちろん、誇り高い仕事となるだけでなく、国家に仕えるという非常に重要な役割を担うことになる。そのため、トランプ氏をサポートしたいと考える有能な政治家や官僚たちが、今後のキャリア形成や自分の立場を引き上げるために喜んで集う可能性がある。
その結果、米国が過去8年間のオバマ政権によって「停滞した経済」を立て直し、成長拡大に向けて動き出す可能性はゼロではない。なんといっても、現時点ではトランプ氏の政治家としての手腕は未知数である。
不安感は否めない。だが、彼のこれまでの経営手腕が生かされるのであれば、期待することは決して悪いことではないはずだ。
ただし、やはり覚えていてほしいのは、共和党政権下の米国株のパフォーマンスは芳しくないことだ。特に政権1年目は平均でマイナスになっている。この点には注意が必要である。
2年目・3年目は大きく上昇するが、4年目にはまた落ち込む傾向がある。この点からも、少なくとも来年はトランプ氏の政治手腕と政策の内容及び実行力を見極める1年間になるのではないだろうか。
その結果、評価できるようであれば、2年目以降に経済は上向き、株価も上昇に転じるかもしれない。少なくとも、今の時点ではあまり過大な期待をしないほうがよい。とはいえ悲観しすぎるのもむだだ。今後トランプ氏が示す政策の評価を行いながら、冷静に対応することが求められる。
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