日本型エリートが留学で得た、英語術の真髄 「発音が通じない!」大ショックの後に…
次に、LとRの発音やempathyの【TH】の音も勉強しました。この音を習得するために、現地の方が発音するところをずっと横で見ていたんですが、本当に現地の方って舌を出して発音するんですよ。でも日本の学校でそういうことやったら、「何、この子」みたいな目で見られるじゃないですか。恥ずかしいみたいな自意識が生まれちゃう。
でもやっぱりそういう気持ちに負けるのではなく、ネイティブの方の発音を見て「【F】って本当に口かんじゃうんだ」とか「【L】って舌出しちゃうんだ」っていうのを実感して、音を徹底的に練習することが大事だな、と思いました。
鬼頭:現地にいるとネイティブの英語すら聞き取れない状況の中で、他国の方が話す独特な英語も聞き取らなきゃいけないケースもありますよね。大変ですよね。
「机の上」の英語にこだわる必要はない
山口:そうなんですよ。他国の方とお話しすると、私の話も通じないし、向こうが何を言ってるのかもわからない。時々「何の歌を歌ってるんだろう」と思うくらい。でもそのときにふと思ったのが、「英語っていったい何なんだろう」ということです。たとえば、アメリカ英語でも西海岸と東海岸で全然違う。実際に私が行ったボストンでも、私たちが中学生のときから聞いてきた英語を話す人はほとんどいなかったです。
そのときに「あ、言語というものはすべてローカライズされていくものなんだ」と悟りました。ヒンディー語が話せない民族が多数いるインドや、植民地を逃れた後も共通言語として英語を使用しているシンガポールなどもその例で、ローカライズが特徴的に表れています。
そういった体験を通じて、結局、私が教育で学んできた英語は机の上の英語にすぎないんだ、ということに気づきました。このリアルな英語に気づくことって、世界を見るという点でとても重要だと思います。
鬼頭:これは私の体験談なのですが、授業とかビジネスでの英語は、限られた分野のフォーマルな英語を向こうの方も話してくれるので理解しやすいんですよね。一方、食事やお酒のフリートークになると急に何を言ってるかわからなくなることがあります。
口語が入ってくるから、私たちの知っている英語じゃなくなるんですね。しかもアメリカの方たちは、アフターファイブは仕事の話じゃなくて家族やプライベートの話を脈絡なく始めるので、文脈も読めない。とりあえず笑うしかできないことがよくあります(笑)。
山口:私もそれすごく経験あります。私が思うに、私たちは日頃「こういう話をしているに違いない」という推測に基づきながら、情報を補完して話しているんですよ。なので、授業は予習で得た情報があるからついていけるけど、フリートークではついていけない。さらに、食事のとき気を抜くじゃないですか。話しかけられても日本語ならすぐにキャッチアップできることが、英語だと「何言ってるの? どうしたの?」とパニック状態になります。もう本当にそんな状況での孤独感はつらすぎましたね。
鬼頭:よくわかります。でもそういう状況を打破できる瞬間というのは来るんですか?
山口:よく言われる、突然、聞こえるようになる瞬間は来ます。あと、コミュニケーションって全部聞き取って、的確な発言をすることではないなと感じました。ちゃんと会話に参加していること、興味を持って聞いているんだよ、ということを出しさえすれば、私がどんなにとんちんかんな答え方をしたとしても、みんな適当に笑ってくれます。
それまでは、「ちゃんと聞き取らなきゃ」「ちゃんと反応しなきゃ」と思ってたんです。勉強と同じように。でもコミュニケーション能力って、それとは別のところにあるのかもしれないと思いましたね。
鬼頭:確かに全然こっちがしゃべれないときでも、意外と拾ってくれますよね。
山口:でも緊張感は最後までありましたね。「あれ、私何かまずいことした?」みたいな(笑)。
※後編に続きます。
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