日本企業で問題化する「なんちゃってMBA」 毎年5000人が誕生!そのムダと弊害
企業に務める人なら、そうした「なんちゃってMBA」の弊害を理解している人も多いのではないか。経営の知識を体系的に学んだと思い込み、経営コンサルタント気取りの「フレームワーク」(経営分析ツール)を使い、表面的なデータ分析だけですべてわかったように勘違いし、「横文字」の経営コンセプトを連発する人。あなたの隣にもいないだろうか――。
経営に必要な知識を体系的に学べる――多くのビジネススクールがMBAの価値をそうアピールする。営業、経理、生産管理しか知らない、そんな狭い範囲での知識と経験だけでは、有能なマネジャー、辣腕経営者にはなれない。だから、若いときに経営に関する多面的な知識を体系的に学ぶことが大事だ、とあおるのだ。
経営を“切り刻んだ”講義で、本質が学べるのか
経営に関する知識を教えるためには、経営を分解する必要がある。経営戦略、マーケティング、ファイナンス、財務会計、組織、人事など、経営を“切り刻み”、専門の教員がその切り刻まれた科目を教える。しかし、切り刻めば刻むほど、経営そのものがみえなくなっていくのだ。
知識を詰め込み、頭でっかちになった彼らのなかには、経営やビジネスが「解った」と勘違いする人も多い。WBSの遠藤ゼミの卒業生に、とても勉強熱心な学生がいた。誰よりも経営書やビジネス書を読み、知識は豊富だった。しかし、本から得た知識だけが独り歩きし、さも自分が考えたかのような「受け売り」の発言がゼミで目立つようになった。私は、彼に「今後、経営書やビジネス書は一切読むな!」と通告した。「自分の頭で考えねばダメだ」と伝えたかったのだ。
MBAを志向するような人は、企画や戦略という言葉に弱い傾向がある。若いときは経営企画部や事業戦略部のような、頭脳労働にみえる仕事に対するあこがれもあるだろう。しかし、企業の屋台骨はオペレーション、わかりやすく言えば「現場」だ。日々のルーチン業務を確実・効率的に遂行することで、企業は価値を創造している。
反復のようにみえるルーチン業務のなかで問題をみつけ、知恵を絞り、創意工夫しながら問題を解決する術を身につける。仕事の質にこだわり、「のめり込んで」いく地道な努力こそが、ビジネスパーソンとして力をつける絶好の場なのだ。そうした仕事の「本質」を、「なんちゃってMBA」が急増し、問題化しているいまこそ、思い出すべきではないだろうか。
私自身、BCG(ボストン コンサルティング グループ)に転職し、駆け出しのキャリアを歩み始めたころ、「どんなプロジェクトでもやります」と担当のオフィサーに伝えて徹底的に現場に「のめり込んだ」。その一年後、「最も活躍したコンサルタント」として表彰されたのだ。コンサルタントとしての「基礎」を、そうした現場を通じて手に入れたのである。
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