もうひとつの代表的な例としては、アメリカで安価な天然ガスの需要が増加する中で、世界1位の液化天然ガス(LNG)輸出国であるカタールが、輸出をアメリカから欧州に切り替える動きを強めていることが挙げられます。アメリカへ液化天然ガス(LNG)を輸出して厳しい価格競争にさらされるよりも、アメリカより価格の高い欧州に輸出したほうが利益は大きいのですから、カタールの判断は至極当然のことといえます。
ところが、カタールから欧州への輸出が増えると、今度はカタール産より割高なロシア産の天然ガスが欧州から弾き出されるようになりました。いまやロシアは欧州への輸出減少の穴を埋めるため、東アジアへの輸出を拡大しようと売り込みに躍起になっています。
着々とシェールガスの輸出準備を進めるアメリカ
以上のように、シェール革命に端を発した石炭や天然ガスにおける輸出の玉突き現象は、将来的に、原油、天然ガス、石炭などのエネルギー価格が世界中で大幅に下落する兆候と読み取ることができます。やがて、アメリカが天然ガスの本格的な輸出に踏み切れば、世界の天然ガス価格や原油価格の下落傾向が決定付けられることになりそうです。
これまで、アメリカ国内で増産が進むシェールガスは輸出先が自由貿易協定(FTA)締結国に限られていて、国内消費がメインになっています。そのような状況下で、12年12月に米エネルギー省は「これまで規制してきた天然ガスの輸出拡大がアメリカの利益になる」という報告書を発表しました。そして早くも2013年5月には、米エネルギー省はシェールガスの輸出拡大を許可する決定をすることとなりました。輸出拡大が許可されれば、石油メジャーが輸出を見込んで投資している大型設備が完成した後、すなわち2016~17年にはアメリカ産のシェールガスが世界に大量に供給されることになるのです。
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