新興国から北米ブームへのプレリュード

市場動向を読む(為替)

さらに、興味深いのが、その米株の史上最高値更新が今春であったということだ。奇しくも、日本では、2月末に黒田日銀総裁誕生が確定し、4月初には量的質的金融緩和が導入された時期である。足許での市場の混乱はあるものの、黒田日銀の金融緩和の狙いが円市場金利の低下と本邦投資家の海外投資を促し、為替レートを円安に誘導すること。その結果、円高デフレの悪循環を断ち切ることにあることは明らかだ。

日本国債の主な保有者は銀行や生損保などの本邦機関投資家である。新興国投資などのリスクテイクに積極的な個人投資家とは異なり、極めて保守的な投資家層だ。首尾よくポートフォリオ・リバランスが生じた場合、投資資金は先ずは円債から米国など主要国の債券にシフトすると予想される。

黒田緩和はFRBの出口戦略を後押し

その場合も為替ヘッジ付きで、直接的な円安効果は乏しいかもしれない。だが、そこで可能になるものが、FRB(米国連邦準備制度理事会)の出口戦略である。FRBの資産購入額の減額、さらには将来的に資産売却が行われる際に、日銀の緩和を受け、日本から流出するジャパンマネーが米債券市場を支えることが期待されるからだ。黒田日銀の金融緩和とそれに伴う円安を、米政府が黙認しているのも頷ける。

このように考えれば、今春、黒田日銀が誕生する中で、ニューヨーク株が史上最高値を更新したのは、市場がFRBの出口戦略の成功を確信した瞬間だったと言っても良い。

ただ、米国の金融政策の出口は世界を巡る資金の流れを変える可能性がある。主要国の金融緩和マネーに支えられてきた新興国市場に警戒感が高まったのも無理はない。4月の日銀の緩和の際には、ジャパンマネーが新興国に殺到するという幻想をいただいた海外勢も、直接的な恩恵を被るのが主要国債券市場であり、新興国ではないという現実に気づき始めた。この1、2カ月で新興国市場が波乱含みとなったのも納得できる。

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