3人の専門家が読む「新大統領のアジア戦略」

「蜜月の日米関係」に変化が訪れる

利害関係者が多いこともあって、両国間関係が一気に悪化することはないだろう。が、だからといって楽観視もできない。これから数年の間に、両国関係の重要な柱に変化が起こることが予想されるためだ。数十年にもわたって、米中関係の安定を最も強力に推進してきたのは米国のビジネス界だったが、近年は中国による米企業の「締め出し」も増えており、今後米国のビジネスコミュニティが米中関係の維持に貢献する場面は減るだろう。もうひとつの変化は中国内で起きている。経済成長の鈍化に伴って、国民は新たな構造改革を要求しており、中国政府への圧力となっている。

いずれにしても、米国の新政権は対中政策において、これまでとまったく異なるアプローチをするより、過去の政権の政策を踏襲する可能性が高く、米国の対中政策の劇的変化を望んでいる人たちは失望することになるのではないか。

日米関係はTPPの行方次第

ダニエル・スナイダー(Daniel Sneider)/APARC研究副主幹。『クリスチャンサイエンス モニター』紙の東京支局長・モスクワ支局長、『サンノゼ・マーキュリー・ニュース』紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る

<日米関係>ダニエル・スナイダー教授

ここ数年間、日米関係はより強固になっているという点で、「異例の時代」を迎えている。日本の新安保法案が可決したことにより、日本の国境を超えた防衛協調でより日米が緊密になる道が開かれたほか、米国の支援の下交渉された慰安婦問題の日韓合意は、北東アジアにおける米国の主要な同盟国と米国における3カ国協力をより強化する結果となった。また、環太平洋経済連携協定(TPP)内での二国間協定交渉を通じて、貿易・投資政策についても、足並みがそろいつつある。

仮にヒラリー・クリントン氏が当選した場合、同じ政党が3期連続で政権に就くことによって、過去数年の「アジア基軸戦略」は確実に勢いを増すことになるだろう。とはいえ、将来的に関係が悪化する可能性がまるでなくなったわけではない。たとえば、日本がロシアと和平条約を締結して領土問題を解決し、日本からロシアへの投資が活発化した場合、日米関係に緊張感が生じる可能性がある。また、米国の新政権は安倍政権に対して、早期の中国や北朝鮮との関係修復や、東南アジアにおける緊張関係の緩和を求めてくる可能性がある。

TPPを米連邦議会で通過させることも、大きな試練となるだろう。条約内容を見直せば、TPPに賛成するという意見も民主党内に根強くあるが、政府高官によると、この可能性は非常に低い。一方、今回予備選でクリントン氏と争ったバーニー・サンダース上院議員や、反ウォール街の旗手として知られるエリザベス・ウォーレン上院議員は、今回の選挙を通じて民主党内での影響力を増しており、選挙後にTPP撤回を求めてくる可能性もある。

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