笛吹けど踊らず。イオン・丸紅の"再編構想" イオン、丸紅主導の構想に食品スーパーは距離を置く

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厳しさ増す食品スーパー

もちろん、食品スーパーをめぐる環境は依然厳しく、業界再編は方向として間違いではない。業界全体では既存店ベースで2012年まで16年連続減収。月次では3月こそ13カ月ぶりにプラスだったが、4月は再び減収に転じた。コンビニなど他業態からの攻勢に加え、来春には消費増税も控える。再編を通じた仕入れコスト低減や効率化は不可避だ。すでに業界では、原信ナルスホールディングスがフレッセイホールディングスとの経営統合を発表。ヤオコーとライフコーポレーションが業務提携の具体化を進めるなど、再編や協業の動きが相次ぐ。

イオン、丸紅が再編を模索する背景には別の思惑もある。イオンの商品政策の柱は、年商7000億円弱で国内最大のプライベートブランド(PB)「トップバリュ」の拡販だ。これまでも同PBを持ち分各社に供給してきたが、各社とも自前のPB販売を優先し、トップバリュの販売額は少ない。直近決算期の売上高比率は、最も高いカスミで3.9%、マルエツはわずか0.3%。イオンの中核会社、イオンリテールの20%弱に比べると極めて低水準だ。今14年2月期は同PBで年商1兆円を計画しており、持ち分各社での拡販が達成のカギを握る。

丸紅にしてもグループ企業への卸額は少ない。マルエツ向けが280億円、東武ストア向けは70億円弱にすぎず、食料部門だけで年2.2兆円を売り上げる同社にとって粟粒のような金額だ。再編によって食品スーパーとの関係が強化できれば、取引拡大につながろう。

ただ、持ち分会社にとっては、すんなりのめる話ではない。各社ともこれまで販売してきた自社PBを簡単に捨て去れはしない。ほかの商社を差し置いて、あえて丸紅からの調達を増やす意義も薄い。「経営の自由度を失ってまで参加するメリットは感じられない」(持ち分会社)。

将来的なイオン、丸紅の連合構想には、現状では資本関係のない食品スーパーも視野に入っていると思われる。だが、協力関係にある持ち分各社すら糾合できなければ、すべてが画餅に帰すおそれもある。

(撮影:風間仁一郎 =週刊東洋経済2013年6月15日

石川 正樹 東洋経済 記者

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いしかわ まさき / Masaki Ishikawa

『会社四季報』元編集長。2023年より週刊東洋経済編集部。

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