ナイキ「パロディ商品」販売者の逮捕は妥当か 時計の「フランク三浦」商標は高裁が認める

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ブランド品を例にすると、ブランド品のロゴマークなどは、単に他の商品と区別するだけの役割ではありません。どこのブランドであるか判断でき、ロゴマークの存在により高い品質も保証されていますし、特定のロゴマークの存在により売れているという側面もあります。

つまり、ブランド品のロゴマークは、「自他商品識別機能」、「出所表示機能」、「品質保証機能」、「宣伝・広告機能」を備えているわけです。そのため、「商標権を侵害する」行為とは、商標が有する機能を損なう、流用することを意味しますので、「本物と区別できるから商標権侵害にはならない」との考え方は誤りなのです。

何が問題だった?

今回、摘発されたブランド商標のパロディ商品は、「自他商品識別機能」、「出所表示機能」、「品質保証機能」、「宣伝・広告機能」の4つの機能を損ねている可能性があります。

パロディ商品は、特定の商標が有する「宣伝・広告機能」を無断で使用しており、ブランドイメージを損ねているものも散見されることから、「宣伝・広告機能」を損ねているとも言えます。

また、パロディ商品が本物と比較して非常に安価で販売されていたことを考慮すると、ブランド商標が備えている「品質保証機能」を損ねている可能性も十分にあります。さらに、一見すると本物の商標と見誤るものも存在し、「自他商品識別機能」、「出所表示機能」を損ねている商品も存在します。

摘発対象となった店には、このような他人の商標権を侵害する商品が販売されていたと評価できる商品が多数存在していたようです。しかし、いきなり警察の捜査が入り、身柄を拘束した対応には非常に違和感を覚えます。

故意に他人の商標権を侵害する行為は、商標法によって刑事罰の対象とされており、本物と区別ができない商品が販売されている場合に警察権力が介入することは理解できます。

しかし、商標のパロディに対して警察権力が介入することは、許される行為と許されない行為との線引きについて裁判所で議論されることなく、抽象的に「商標のパロディを行うと逮捕される」という印象だけが強く残り、周囲に与える委縮効果があまりにも大きすぎると思います。

今年4月には、著名な時計メーカーであるフランクミュラーのパロディである「フランク三浦」の商標登録が、知的財産高等裁判所において認められています(フランク・ミュラー側は上告)。今回の件についても、民事上の問題として、裁判所で十分な議論が行われるべきであったと考えています。

冨宅 恵(ふけ めぐむ)弁護士
大阪工業大学知的財産研究科客員教授
多くの知的財産侵害事件に携わり、知的財産間に関する著書・論文等の発表、知的財産に対する理解を広める活動にも従事。さらに、遺産相続支援、交通事故、医療過誤等についても携わる。
事務所名:スター綜合法律事務所

 

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