トクヤマ、2000億円投資はなぜ失敗したか? 横田社長が語る敗因の本質と再建への道筋

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――当時、社内では投資に反対する声もあったと聞くが。

韓国や中国企業もどんどん参入し始めていたので、社員たちの間では、危惧する声があちこちで聞かれた。「太陽電池用シリコンは単純な価格の勝負。そんな分野に出ていって大丈夫か」と。ただ、当時のボードに、そうした問題意識がどれほどあったか。明確に反対を表明した役員はいたが、ボードの中では少数だった。私に言わせれば、これはまさに当時のガバナンスの欠如が招いた問題ですよ。

もう一点挙げるなら、2011年後半から市況が暴落し始めて明らかに怪しくなった時に、ブレーキをかけるべきだった。せめて、投資を決めてからまだ日が浅かった第2工場については、違約金を払ってでも、いったん建設を凍結すべきだった。

半導体関連とヘルスケアの拡大に注力

――これからどう経営の再建を進めて、マレーシア工場の巨額損失で痛んだ財務を修復していくのか。

当社はソーダや塩ビなどの化成品、半導体シリコン、セメントなどさまざまな事業を手掛けているが、マレーシア以外の事業はきちんと利益を稼いでおり、今期の連結営業利益は300億円を超える見通しだ。今後の方向性としては、半導体関連など独自技術で差別化できる分野をもっと伸ばしていく一方で、市場が成熟した汎用の塩ビやセメントは効率化などで収益性改善に取り組む。この2つの基本戦略で期間収益とキャッシュフローを増やし、財務の再建を早期に実現したい。

――これから先、成長が期待できる事業は?

まず一つ目が半導体関連。半導体の微細化でシリコン自体の総需要はさほど伸びないが、どんどん厳しくなっている品質要求に応え、技術力でライバルからシェアを奪っていく。半導体関連では薬品も手掛けており、微細加工化を背景に製造工程で使用される電子高純度薬品が順調に伸びている。

また、医薬品の原薬、歯科材料、診断薬などのヘルスケア領域も成長が期待できる事業だ。こうしたヘルスケア関連の売上高は合計で220億円前後とまだ小さいが、いずれも独自の技術があって、高い付加価値もとれている。マーケットは間違いなく伸びるので、買収なども視野に入れながら、ヘルスケア分野を将来の大きな柱に育てたい。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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