留学するなら「自分探し」はやめるべき
最後に、留学するなら、日本でひところ流行った「自分探し」という考え方をやめるべきだと書いておきたい。日本人は階級意識が希薄だから、こういう考え方になるが、アメリカに限らず、社会階層が明確な国では「自分探し」には意味がない。
なぜなら、探すべき自分は、すでに決まっているからだ。
このグローバル時代、まず「人種」「民族」、そして「生まれた国」「育った地域」「家族」「家庭環境」「親の収入と職業」、さらに「学校の成績」「得意科目」などで、あなたが誰かはすぐにわかる。ネット検索で得られる位置情報(GPS)は、「地球上のどこにいるか」だが、位置情報というのは地理的なヨコの情報だけではい。タテもある。
タテというのは、「人類社会」のこと。地球上に約70億人いる人類がつくる社会階層の中で、「あなたがどこにいるか」ということだ。ネット社会では、こんなことは即座にわかる。したがって、学歴で決まる階級社会というのは、実力によってこのタテの位置(社会階層)をどう移動するかという問題だ。
この連載のテーマは、日本人としてのアイデンティティの確立にあるが、実は、それは位置情報としてはすでに決まっているのである。したがって、「自分探し」というのは、内面(こころ、意識)だけの話になる。これは一生かかってやることで、留学でやることではない。
SMAPの大ヒット曲に、『世界に一つだけの花』(作曲・詞 槇原敬之)がある。その歌詞「キミはこの世界でたった1つの存在。人間は誰しもみな特別な存在」は、自分探しをする若者にはバイブルのようなものだと思う。どんなつらいときでも、「オンリーワン(この世界に咲くたった一つの花)」と、慰めてくれるからだ。
しかし、こういう考え方は留学には向かない。「オンリーワン」を否定した『ドラゴン桜』(作・三田紀房、講談社)の教師・桜木建二の言葉のほうが留学には向く。
「ナンバーワンにならなくていい、オンリーワンになれだあ? ふざけるな! オンリーワンていうのは、その分野のエキスパート、ナンバーワンのことだろうが」
留学するなら、ぜひ、こうあってほしい。
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