ボルボSUV「XC60」300馬力超えモデルの実力 2リッター4気筒だからといって侮るべからず

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コーナーの連続する道では、それこそひらりひらりと車重を意識することなくカーブをクリアできる。車高の高いSUVでこの走りが味わえるのであれば、あえてスポーツカーを選ぶ必要もないのではないと感じてもそれは間違いではない。道を攻めるに従って味わえるクルマとの一体感は、ボディがひとまわりも小さくなったのかと錯覚する。こうしたスポーティなドライブフィールは、誤解を恐れずに言えばXC90よりも楽しいと評価したくなる。

XC60のT6 AWD Rデザインでは、Rデザイン専用のグリルやバンパー、255/45R20サイズのタイヤや5本スポークデザインの専用ホイールなどを採用し、スポーティなアピアランスを提供する。ドライバーズシートもサイドサポートが張り出したスポーティな形状で、内外装ともにRデザインが特別なグレードであることを改めて意識させてくれた。

デビューしたての新世代フォルムを纏った3列シートのXC90にばかり話題が集まるのはしかたがないことだとしても、パーソナルユースを前提に考えれば、XC60もまだまだ多くの魅力を持っている。もちろん、ボルボ自慢のセーフティデバイスも最新バージョンで標準装備。走りも安全性も死角はない。

ドイツブランドが火を付けた世界的なSUVブームは、一過性どころかすっかり定着した感もある。ライバルの多いこのカテゴリーの中にあっても、熟成なったXC60の魅力は色あせていない。それどころか、いまでも一線級のバリューを持つSUVだとさえ思わせる。基本設計の確かさと、地道にクルマを進化・改良させていくボルボの技術陣の力量を感じないワケにはいかない。スポーティなSUVは、ドイツブランドの専売特許ではない。そして新型車だけが最良ではないということを、XC60はステアリングを握る者に対して雄弁に語りかけるのだ。

ボルボ XC60のルーツ

ボルボ XC60のルーツは2007年1月のNAIAS=北米国際自動車ショー(通称デトロイト モーターショー)で初公開されたXC60コンセプトで、当時はまだフォード傘下のPAG(プレミア オートモーティブ グループ)に属していた。

ジャガーやランドローバー、そしてアストンマーティンなどのニューモデルと同時に行われたPAGのプレスカンファレンスでは、XC90に続く期待のクロスオーバーSUVとして、堂々たる存在感を示した……という会場での記憶が、まるで昨日のことのように蘇る。リーマンショック前夜のデトロイトは、いまでは想像出来ないほど活気づいていた。会場に出向いた誰もがそう肌で感じることが出来たのだ。

XC60登場の後、それに続くS60やV60、そして世界的なヒット作となったV40も同様のデザインコンセプトを採用したのはご存知のとおり。つまり、XC60は、現行ボルボのデザインを作り上げた立役者と言っても良い存在なのだ。

(文・嶋田智之)

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