ヤフーの人事制度を抜本的に変える際も、人事部研修がここで開かれた。ほかにも20人前後の部署が丸ごとバスでやって来ては、研修や合宿がたびたび開かれている。
震災後、このオフィスができてから、ヤフーにおいて、○○合宿というものが増えたことは確かだと思う。ざっと計算しても、すでに石巻には、100人以上のヤフー社員がやって来ていることになる。こうした取り組みをしている企業は、業種を問わず、珍しいことかもしれない。
社長である宮坂ももちろん何度か来ているが、副社長の川邊においては、「インターネット企業の社員は、どこにいても仕事ができるということを自ら証明する」という名目で、1週間くらい滞在していたこともある。TV会議や電話会議を駆使し、本当に1週間、石巻で仕事をしていた。しかもその間に、地元のおいしい店を発見してそこのおじちゃんと仲良くなったり、地元の人たちと一緒に釣りに出掛けたりしていた。さすが、われらの大ボスたち。どこにいても仕事もアソビも全力! とてもじゃないが、かなわない。
ふだんの職場を離れ、遠く石巻まで来て感じることは多々あると思う。研修の内容は必ずしも課題解決ばかりではないが、宮坂や川邊が言うように、日本の課題が集まっているとも言える石巻、そして本社から離れてもITを駆使すればビジネスはどこでもできるんだ、ということを感じ、しかも実践するということには大きな意味がある。
そして肝心のヤフー社員の反応だが、こうした被災地での研修やハッカソンは、予想以上に好評だ。六本木の本社で、昼休みに販売している復興弁当があっという間に売り切れるのが象徴的だが、社内では静かな石巻ブームが起きている。
ハッカソンに参加することで、石巻のエンジニアと仲良くなって交流が始まったり、夜飲みに行って地元の人と知り合いになったりして、石巻にハマっていく社員も少なくない。プライベートで石巻に遊びに来たり、東北の支援を東京で率先して行ってくれる人までいる。
「いつの間に、そんな石巻フリークに!?」と、驚くことがよくある。
気軽な立ち寄り場所としての役割
また、石巻復興ベースがこれまで、いろいろなメディアで取り上げてもらったことで、東京の企業やNPO、学校が東北を巡る際、「被災地ツアー」等の一環で、見学に来るケースも増えてきている。
「今度、石巻に行くことになったので、ちょっと立ち寄らせてほしい」
他社から、そんな依頼を受けることも多い。つい最近も、日本IBM、トヨタ、NTTデータなどが石巻復興ベースを訪問してきた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら