一方、上越市は今年9月、2015年9月に実施した新幹線に関する市民アンケートの結果を公表した。人口約20万人の同市で8015人に調査票を配布するという大規模調査で、45.7%に当たる3661人から回答を得た。整備新幹線の沿線で、新幹線利用者を対象にしたアンケートを実施した自治体は珍しくないが、地元市民全体を対象に大規模調査を実施した自治体は、筆者が知る限り前例がない。
アンケートによると、開業から半年の時点で、回答者の8割近くが上越妙高駅に足を運んでいた。目的は「乗車」が最多で、訪問者の5割強が、すでに新幹線を利用していた。また、駅舎の見学やイベント参加が目的の人も多かった。回答者のうち、半数近くが、開業によって「上越市を紹介しやすくなった」と答え、同じく3割が「上越市に愛着や誇りを持てるようになった」と感じていた。
ただ、首都圏や長野県、北陸との心理的距離が縮まったと感じた人が5~6割に上る一方、在来線特急の廃止の影響か、新潟市や長岡市など県内の下越・中越地方との心理的距離が遠くなったと感じた人も2割ほどいた。
同市は「平成の大合併」で、全国最多の14市町村が合併して現在の姿になり、面積は東京23区の1.5倍もある。広大な市域で、上越妙高駅への距離も一様ではないが、駅に近いほど新幹線開業への評価が高い。
市は総体として「全市域において開業効果が表れている」と位置付けている。ただ、調査時点では、市民の間にも地域の変容や将来像について、必ずしも明確なイメージが描けておらず、上越妙高駅の遠さ、第三セクター化した並行在来線のダイヤなどに対する不満や不安もうかがえる。いずれにせよ、地域の将来デザインを考える上で、基礎的なデータが存在すること自体が、非常に重要な意義を持つだろう。
富山駅前の変化は一段落
今年3月以来の訪問となった富山市は駅前の整備が一段落し、落ち着きを取り戻していた。正面口には駐車場や飲食店がオープンし、近隣の農家が軽トラックで野菜を販売する光景も。駅前ではビル工事が進んでいた。
同市で注目されるのは、コンパクトシティ政策と連携する形で市が実施している「マルチハビテーション(多地域居住)」支援事業だ。富山県外の居住者が、市中心部に住宅を新築したり購入したりする場合、1件につき25万円を助成する。2014年の制度開始以降、7件の利用があったという。新幹線開業で多地域居住がどう進展するのか、目が離せない。
富山駅の隣駅、新高岡駅(富山県高岡市)付近も、1年ぶりに訪れてみると景観が大きく変わっていた。南口には2017年1月にオープン予定のビジネスホテルの姿が。近隣では全国チェーンの居酒屋や、地元資本の美容室の建設も進んでいた。
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