開業2年目「北陸新幹線」、沿線駅の明と闇 駅前と市街地が競合する地域も

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新高岡駅前に姿を現したビジネスホテル

新幹線開業に前後して、域外から北陸地方への大規模店進出が相次いだ。これらに対抗する格好で、新高岡駅に隣接する「イオンモール高岡」は開業の直前の2015年3月、リニューアルに踏み切った。さらにその後、同駅南側への大規模な増床を計画していることが報じられるなど、沿線を取り巻く商業環境は変化し続けている。

現地では同時に、地元企業と進出企業との間で、賃金水準の格差が大きくなり、地元企業が人手不足に悩んでいるという情報にも接した。人口減少・少子化社会における「マンパワー問題」は、北海道の道南地域でも起きている。

一方、新高岡駅から北へ約1.7kmの距離にある高岡駅の周辺でも新たな動きを目にした。高岡ステーションビルは新幹線開業に先立つ2014年3月、「クルン高岡」の名で大規模リニューアルし、路面電車・万葉線が駅ビルに乗り入れるようになった。中心市街地を死守しようという覚悟を感じさせる光景だった。

今回の訪問時には、「富山県高岡看護専門学校」の建設が駅の東隣で進んでいた。市内にある市立高岡看護専門学校など3校を統合し、2017年4月に開校予定という。さらに、同市に本店を置く地方銀行・富山銀行が2019年春、約800m離れた現在地から駅前へ本店を移転する計画だ。

「新幹線効果」検証のあり方は

今年の北陸新幹線沿線の調査は、7月下旬に駆け足で数都市を回ることしかできず、沿線全体の変化を十分に感じ取るには至らなかった。一方で、ビッグデータを活用した非常に興味深い調査が始まっていた。北陸信越運輸局(新潟市)は携帯電話の位置情報を活用し、北陸新幹線開業の前後で人の流れがどのように変わったかを調査した。詳しい結果は同運輸局サイトに譲るが、新幹線開業と並行して、バスや乗用車による、人の流れの大きな変動が起きているようだ。

NHK北海道も今年4~8月、北海道新幹線開業を対象とした同様の調査を道南地区で実施しており、新幹線利用者の動線の一端が明らかになっている。

本連載でもたびたび言及してきたように、つぶさに見ていくほど「新幹線効果」の確認や検証は難しい。時代の空気、老若の世代感覚、そして地域の地理的な位置や固有事情――これらが複雑に絡み合って、「何か」が生まれたり、生まれなかったりする。

新幹線の新規着工論が浮上する中、今後、誰のため、何のために、何をどのような手法で明らかにするべきなのだろうか。最先端の手法や統計データ、現地ならではのフィールドワークを組み合わせた、適切なウオッチ・調査の在り方自体が問われている。 

(写真はすべて筆者撮影)

櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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