ワイン名産地「ボルドー」を襲う変化の波 生産者農家たちの葛藤と取り組み

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「シャトー・ラ・ヴェリエール」は成城石井へ年間15万本を輸出している。写真はオーナーのアラン・ベセットさん

フランス・ボルドーは同国東部のブルゴーニュと並ぶ世界有数のワイン生産地として広く名を知られる南西部の都市である。年間の生産量は約6億リットルに上り、このうち6割あまりがフランス国内で消費され、残りはドイツ、ベルギー、英国など欧州中心に世界各地へ輸出されている。ボルドー市のホームページの記述によれば、「世界で毎秒、24本のボルドー産ワインが売られている」。

そんな「世界のワインの首都」に変化の波が訪れている。フランスやイタリアでは若者を中心にワイン離れが進んでいるほか、ワイン農家の後継者問題も取りざたされている。こうした中、農家やボルドー市で新たな取り組みも始まっている。ちょうど白ワイン用のブドウが収穫期を迎える9月下旬、同地域の生産者農家へ足を運んだ。

成城石井と25年前から取引

ボルドーのブドウ栽培地の面積は12万ヘクタール。フランスの主要なワイン生産地では南東部のローヌ地方の7万7000ヘクタールを上回り、最大の広さだ。「シャトー」と呼ばれるワイン造りを行う農家が7000以上存在する。「シャトー」はフランス語で「城」を意味する言葉だが、ワインの世界では「醸造所」とほぼ同意だ。

「ボルドー産のワイン」と言って、多くの人が思い浮かべるのは、「5大シャトー」で生産されている「1級」に格付けされた超高級ワイン。4つのシャトーがメドックという地区にある。

格付けには国が定めた「AOC(原産地統制呼称)」という制度もある。メドックなど地区ごとの格付けとは異なるものだ。ブドウの品種や栽培・醸造の方法について、「一定の基準を満たしている」というお墨付きといえる。ボルドーには60のAOCが存在。ブドウ栽培地の面積のうち11万3000ヘクタール、量にして5億6000万リットルがAOCの格付けを持つワインだ。

「AOCボルドー」と「AOCボルドー・シューペリユール」のワイン

実際に訪れたのは、60のAOCのうち、「AOCボルドー」「AOCボルドーシュペリユール」に格付けされたワインを生産する農家が中心だ。そのひとつ、「シャトー・ラ・ヴェリエール」は年間生産量46万本のうち40万本を日本、ドイツ、ベルギー、米国などへの輸出に振り向けている。そのうち、15万本が日本の高級食品スーパーの成城石井向けだ。

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