新型ロマンスカー、「観光」以外にもある狙い 小田急複々線化完成の2018年春にデビュー

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

新型ロマンスカーがデビューする2018年3月には、現在工事が行われている世田谷代田-東北沢間の複々線化が完成し、小田急にとって念願の複々線がすべて完成する。同時にダイヤ改正も行われ、現在はピーク時1時間あたり27本の運転本数が36本まで増えるなどの効果が期待されているが、通勤時間帯のロマンスカーも増発される予定だ。

ロマンスカー30000形EXEをリニューアルした「EXEα」のイメージ(提供:岡部憲明アーキテクチャーネットワーク、小田急電鉄)

同ダイヤ改正では、朝7~8時台に新宿や大手町に到着するロマンスカーを4本増発。さらに、深夜の下り列車も1本を増発するという。小田急は新型ロマンスカー導入に先立ち、通勤特急向けとして1996年に導入した30000形EXEのリニューアルを行い、観光特急とともに通勤特急のテコ入れも図る方針だ。70000形についても「観光主体で運用したいが、通勤時に出てくる場面も多くなると思う」と星野氏はいう。ほぼ観光専用車であるVSEとの大きな違いだ。

その差は車両の構造にも表れている。VSEは車体と車体の間に台車がある「連接構造」なのに対し、70000形は1つの車両に2つの台車を備えた一般的な「ボギー車」だ。従来、展望室付きのロマンスカーはすべて連接構造だったが、キャパシティを確保するためにはボギー車のほうが有利なためだ。星野氏は「(座席数が増えることで)使い勝手は格段に上がる。我々としては400席という大台はなんとか確保したかった」と説明する。

箱根への観光特急として知られるロマンスカーだが、実際には「どちらかというとビジネスユースのウェイトの方が高い」(山木利満社長)のが事実だ。「観光特急を入れるなら、そういった使用にも応える必要がある」。展望席を備えた観光特急をコンセプトとしつつも、新型特急の狙いは、通勤にも使えるユーティリティープレーヤーであるといえそうだ。

伝統あるロマンスカーのプライド

関東の大手私鉄では、2017年春に東武鉄道の新型特急「500系」が登場するほか、2018年度には、建築家の妹島和世氏による斬新なイメージ図が話題を呼んだ西武鉄道の新型特急もデビューする。2018年春は、多摩ニュータウンへの輸送でライバルである京王電鉄でも座席指定制の新型列車が運行を開始する予定で、各社の看板列車が続々登場することになる。

ロマンスカーは小田急のフラッグシップであるだけでなく、私鉄の特急列車を代表する存在として君臨してきた。今回の新型車両導入は特に他社の動向を意識したわけではないというが「やっぱり負けられないですね」と同社CSR・広報部の相沢喜一郎課長は語る。

50年近く前から通勤客向けに帰宅時間帯の特急を運行するなど「観光列車でも通勤特急でも、さらに建築家がデザインを手がけた列車の導入でも先駆者」(相沢氏)というプライドのある小田急。両方の機能を意識した「二兎を追う」新型ロマンスカーは、他社の自信作と並んでどのように評価されるだろうか。そして「VSE」「MSE」に続く新型にはどんな愛称が付けられるだろうか・・・・・・。2018年3月のデビューが待たれる。 

小佐野 景寿 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事