新型ロマンスカー、「観光」以外にもある狙い 小田急複々線化完成の2018年春にデビュー
70000形は1両あたりの長さが20mの7両編成で、編成全長は箱根湯本駅のホームに収まる約140m。定員は400人で、VSEと比べて42人増えた。2編成での製造費用は約40億円で、単純計算では1両あたり約2.85億円。小田急の星野晃司専務取締役は「高級感のある仕様という意味では通常のコストかと思っている」という。
デザイン面で重視されているのは眺望性だ。編成両端の展望席はそれぞれ16席ずつ設けられるが、前面は1枚の曲面ガラスで全体を覆うという。側面の窓ガラスも、既存のVSEやMSEより高さを30㎝拡げた1mに。さらに、先頭車両については車内の見通しがよくなるよう、座席上にある荷棚をなくす。「車両全体が『展望車』となって、まるで外をそのまま走っているかのようなイメージ」(岡部氏)とするためだ。
荷棚がないと荷物の収納場所が問題になるが、ここには岡部氏の「車内の荷物置き場」についての哲学が表れている。70000形の車内デザインで一番工夫したのは「荷物に対する扱いをはっきりすること」だと岡部氏は語る。
コンセントやWi-Fiも
実は、荷棚のある中間車両でも収納スペースとして重視しているのは座席下だ。座席の構造を工夫することで、国内線機内持ち込みサイズの荷物を座席下に収納できる構造としたほか、大型のスーツケースなどについては、車両の出入口付近に荷物置き場を設置するという。外国人観光客など、荷棚に載りきらない大型の荷物を持っている人への対応や「高齢化社会を考えると、荷棚のような高い位置に荷物を置かなくて済むほうがいい」(岡部氏)との考えからだ。
このほか、車内にはコンセントを設置し、Wi-Fiサービスの提供も行うほか、前面からの展望映像を配信するシステムも備えるという。「座席を向かい合わせにした時でも使えるように」(岡部氏)との考えから、ロマンスカーの座席テーブルは席の背面ではなく肘掛けに収納するタイプを採用しているが、テーブルも大きめになるという。
観光特急のフラッグシップとしてさまざまな工夫を凝らした新型ロマンスカー70000形。だが、近年各地の鉄道に登場している観光列車のように、ラウンジや特別なグレードの座席などは用意されておらず、VSEには存在するガラスのパーティションで仕切られた「サルーン席」などもない。小田急は「乗車時間が短いこと」などを理由に挙げるが、新型は観光だけでなく、通勤特急としての活用も念頭にあるのだ。
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