35歳エース記者が書けなくなった深刻な事情

「うつ急増」引き起こした現代人の悪弊とは?

症状だけ見れば、この2つの病気は似ています。しかし、その原因には違いがあります。うつ病の中には、脳機能の異常ではなく、心の悩み(職場のストレス、人間関係、借金などの経済的問題)で「うつ」になっている人がいます。今やそれもうつ病と呼ぶことになり、鬱病やノイローゼという呼び名は消滅することとなりました。

21世紀に入って急増したうつ病の場合、その原因は都市のライフスタイルと密接にかかわっています。サービス産業が中心となり、そこに最適化されたホワイトカラーの都市生活を考慮に入れなければ、患者さんのことは理解できません。ストレス社会に生きる都市のビジネスパーソンこそ、この病禍の犠牲者なのです。私はこのようなうつ病を、「都市型うつ」と呼んでいます。

私の外来には、都内のクリニックや大学病院から次々に患者さんが移ってこられます。その中には、霞が関の官僚、大手町の銀行マン、六本木のIT系会社社長、新聞記者、さらには医師(それも精神科医すら)など、さまざまな職業の方がいらっしゃいます。

その中でも、この「都市型うつ」の観点から見て最悪の職業と言えるのが、新聞記者です。なぜならば、短時間で不安定な睡眠、アルコール乱用など、「都市型うつ」をもたらす生活習慣の悪条件がほぼすべてそろっているからです。

新聞記者の生活は「都市型うつ」の条件がてんこもり

おおまかにくくって、彼らの生活は以下のようなものです。大手新聞社の場合、締め切りは、朝刊の場合で日付が変わってから、夕刊は正午に設定されるのが一般的です。したがって、記者たちは夜に翌日の朝刊の記事を書き、午前中に夕刊の記事を書きます。ただ、締め切り間際に大きなニュースが飛び込んでくると、締め切りを遅らせてでも次の朝刊、夕刊に載せようとします。その結果、入稿期限ギリギリの瞬間まで時間との戦いが続くのです。

また政治部や社会部ともなれば、「夜討ち朝駆け」と呼ばれる、深夜や早朝の不意打ち取材を仕掛けることが日常茶飯事。大きな事件ともなれば、休日はなくなります。そのうえ、記者の人たちの中には、酒をこよなく愛する人が少なくありません。

しかし、新聞記者だってヒトです。生理学の法則に勝てるわけがありません。孤独な戦いを強いられるうえに、慢性的な睡眠不足とアルコール漬けの日々。これだけ条件がそろえば、「都市型うつ」になって当然なのです。

私は、一流の新聞記者を何人も診察していますが、記者という人たちは、例外なく、知的な人です。しかし、本来は「知性の人」であるはずの記者さんが、短時間睡眠という根拠のない信仰にしがみついているのは何とも解せません。

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