大飯原発が左右する、原発再稼働の行方 本格化する原発選別 大飯の判断が試金石に
関西電力vs.規制委
新基準を用いた規制委の審査の厳格さを測る意味で試金石と目されているのが、唯一稼働中の大飯3、4号機に対する安全性評価である。
大飯3、4号機は昨年7月、関西地区の電力不足への緊急対策として、当時の民主党政権による政治判断で再稼働が認められた。一応、当時の暫定的な安全基準をパスしたことになっているが、新基準による審査を待たずに、いわば仮免許の状態で運転されている。9月には法定の定期検査に入るが、今のまま新基準施行後も運転が続けば完全な違法運転ともなりかねない。
そこで規制委は、特例的に定期検査までの運転継続を認める条件として、新基準案に照らした評価会合を4月から行っている。あくまで科学的見地に立った安全性の評価であり、電力需給や経済的影響などの要素は含まない。場合によっては定期検査前に運転停止を求めるとしており、事実上の事前審査といえる。
これまでのところ、規制委と関電の対立があらわになっている。たとえば地震・津波の安全性評価会合では、「周辺海底にある二つの断層と陸上の熊川断層の3連動を前提として基準地震動を評価すべき」とする規制委に対し、関電側は「その必要はない」と主張。議長を務める島崎邦彦・規制委員長代理は「なかなか理解していただけない」と不満を示した。原発直下の地下構造についても、関電の調査は不十分だと厳しく指摘している。
関電がおそれるのは、基準地震動や基準津波を大幅に引き上げた場合、大飯原発は7月以降、運転停止に追い込まれるだけでなく、定期検査後も防潮堤を完備する14年3月以降まで再稼働の申請が遅れかねないことだろう。
一方の規制委としては、これまで安全性評価に関して「大飯を例外視しない」(田中俊一委員長)と公言してきただけに、甘い評価を下したと世間から指摘されるようだと、新規制基準ともども規制当局としての信頼性を最初から失うことになる。その意味でも、大飯の評価には単なる予行演習以上の意味合いがある。
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