不二家のキャンディが中国市場で売れる理由 現地で人気を誇るのはあのキャラクター
ただ、当時から一個一個のキャンディを個装して袋入りで売っているメーカーは中国国内にごまんとあった。しかも、日本でもおなじみの「チュッパチャップス」のように棒がついている飴も、欧州メーカーがすでに先を制する形で販売済み。不二家には入り込む隙がないようにも見えた。
だが、意外にもキャラを前面に出している欧州メーカーはあまりなかった。しかも、不二家の伝統的なキャラである「ペコちゃん」だけでなく、「そのボーイフレンドである“ポコちゃん“への潜在的な人気が高いことがわかった」(当時の中国事業を担当していた同社の幹部)。日本ではポコちゃんの存在はさほどではないが、当時、中国では「一人っ子政策」もあり、女の子よりも男の子のキャラのほうがむしろ人気があったのだ。
そこで同社は不二家得意の「キャラ」を前面に出すことにした。小売店の什器を工夫したりするだけでなく、駅の構内やバスラッピングなどでの広告、TVCMも展開。これがプラスに働いた。
日本でポップキャンディといえば、フルーツ味が主体。だが、中国ではミルク味に加え、梅味まで商品構成がひろがる。とりわけ人気の高いのがミルク味だ。中国では現在も牛乳の流通に問題を抱えている。そのため「日本メーカーの安心」がウリとなり、中高級イメージの維持にも役立っている。
今年11月には杭州の中国本社内にある第3期工事が竣工予定で、現在の2倍の生産量に向け一歩踏み出すことになる。だが、同社の幹部は慎重な姿勢を崩していない。
消費の構造変化には警戒感
中国でもコンビニエンスストアが発展するにしたがって、従来からの「20袋入り」へのニーズは徐々に薄れている。同社はコンビニ向けを中心に「4本入り」や「8本入り」などの小袋タイプを発売する一方、食べごたえのある1本10グラムの大型タイプ「大棒棒糖」(通常は6.25グラム)も発売するなどして、中国の消費構造の変化についていこうとする。こうした商品はむしろ20本入りよりも採算が良く、同社にとっては歓迎だ。
一方で、既存タイプは他のメーカーとの競争も激しくなる。このところ中国で消費不振から大型スーパーが相次いで倒産していることにも、同社は警戒を強める。
政治リスクも消えたわけではない。「何年かに一度、反日デモや反日ムードが盛り上がる。その際、商品が売り場から撤去されたり、中国人の社員が嫌な思いをすることがあった」(不二家(杭州)食品有限公司の日野和明・董事長兼総経理)。さらに、直近の元安は、現地の収益とは直接関係はないものの不二家の連結決算上はマイナス要因となる。
不二家は今期、3年ぶりに復配できるかどうかというところまで回復した。国内の洋菓子事業は不採算店数が縮小。菓子事業でもカカオ70%配合の薄版チョコレート「カカオ70」などを発売するなど、国内事業の構造改革は徐々に進んでいる。だが、それだけで本格復活はおぼつかない。中国における「ポコちゃん」「ペコちゃん」への期待は、これからも大きくなりそうだ。
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