スペインでは中道右派の国民党を率いるラホイ首相が、野党の社会労働党から支持を取り付けられず、他党との連立に苦慮している。
英国では、メイ新首相が与党保守党の取りまとめに苦しんでいる。閣僚の一部が欧州からの完全離脱を提唱する反面、最大の貿易相手先であるEUとの通商関係を維持するように求める向きもある。
スウェーデンやオランダのような国にもポピュリズムが忍び寄っている。米国のトランプ氏は今や、欧州の大半の国で非常にくつろいだ気分になれるかもしれない。
2008年の世界経済危機以降の成長鈍化で、伝統的な政党への有権者の支持は低下した。右派にせよ左派にせよ、政権を取った与党は国際協力や自由貿易、公的支出、減税などの点で折り合ってきた。
しかし今日のポピュリストは、主流のコンセンサスから外れた単純すぎる答えを求めている。彼らは暮らしや経済を破壊するとしてグローバル化を非難し、不透明感や社会的地位低下をもたらした「他者」を、敵に仕立て上げようとしている。
ポピュリストの世界観はあいまいさを認めず、そこに中道はありえない。合意や調和を求めることは裏切りに等しく、雄たけびや扇動を通じ、迷信や反啓蒙主義がはびこる時代に時計の針を戻そうとしている。
もちろんポピュリストが唱える古きよき時代というのは幻想である。とはいえ、それほど多くの有権者がその“フィクション”を好んでいるというのも現実だ。
民主主義をあきらめるな
われわれは今、民主主義を決してあきらめるべきではなく、ポピュリストに正面から向き合わねばならない。彼らの見掛け倒しの議論を一つずつ論破し、彼らの怒りの姿に対しては、静かに理性的に熟慮する必要があるだろう。
重要なことは、経済的な疎外感の原因を解決することだ。まずは恵まれない環境下のコミュニティに、より充実した公共サービスを提供し、教育や技術への投資を進め、高賃金で熟練した仕事を増やすべきだ。
ポピュリストから逃げたり、その戦術や議論をまねしようとすると、民主主義を支えてきた社会契約を傷つけることになる。今、主流派の政治家の前には険しい道が待ち受ける。彼らはつねに戦う姿勢を忘れてはいけない。そして自らの主張への自信も示さねばならない。これは勝たねばならない戦いである。
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