北朝鮮で何が起きているのか?

ロバート・マニング氏に聞く

その一方で、政府が国を閉ざそうと努めているにもかかわらず、いくつかの要因(貿易や中国への難民の流出、韓国から入ってくるCDや放送、今や500万台とも言われる携帯電話)によって、国境は穴だらけ、情報が容易に行き来するようになっている。

北朝鮮の今の体制は統制するのが大好きで、自分たちが統制できない物事を極端に嫌う。だからこそ北朝鮮は、中国やベトナムが推進してきたような経済改革を、拒絶し続けてきた。

しかし、外部世界の現実の厳しさを目の当たりにするにつれて、悪政を敷く現体制が拠り所とする「社会主義の天国」という神話は、ほころびを見せ始めている。世界で唯一の世襲制スターリン主義独裁体制を維持しようとして、今まで国民に大ウソを吹き込んできたが、2300万人の北朝鮮国民がそれは大ウソだと認識するようになれば、体制がしだいに崩壊する可能性もある。

北朝鮮の体制は本当に不安定なのか

私は、一般国民の間で反抗に立ち上がる用意が整ってきている、と言っているのではない。国民の反乱は近い将来には起こりそうもない。北朝鮮政府はいまだに恐怖政治を行っており、約20万人もの国民が強制労働収容所に送られている。国外逃亡を企て未遂に終わった人たちが処刑される例も多く見られる。

ロバート・A・マニング アトランティック・カウンシル上級研究員
米国務省にて、東アジア・太平洋地域担当米国務次官補、上級顧問、政策企画部員などを歴任。2008~10年に米国家情報会議ディレクターを務めた

しかし、この国を現実から遮断しようとする取り組みが、周縁部から徐々にほころびつつあるのは覆い隠しようもない。北朝鮮の体制側は現状を苦々しく思い、脆弱だと見ているようだ。

新たな指導者の下で体制を発足させるに当たり、困窮する国民に対する統制強化を主張し、体制への支持をあおり立てようとする者にとって、国民に恐怖を吹き込み、米帝国主義が今にも核戦争を仕掛けてくると言い立てるほど、安易な方法はほかにない。そのためにはどんな手段をもいとわない。

たとえば、外国の大使館にピョンヤンからの退去を促し、韓国内の外国人には戦争勃発前に国外脱出するよう警告した。これは大げさな政治劇だが、北朝鮮政府は、それがどんなにばかげたことか、気づいていないようだ。

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