北朝鮮で何が起きているのか? ロバート・マニング氏に聞く

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5月7日の米韓首脳会談では、北朝鮮問題での両国の連携が確認された(写真:アフロ )

北朝鮮のミサイル発射に関して、依然、世界中で緊張状態が続いている。北朝鮮の動きの背景には何があるのか。今後どのような展開が予想されるのか。北朝鮮情勢に詳しい、アトランティック・カウンシル上級研究員のロバート・マニング氏に話しを聞いた。

――現在の北朝鮮情勢をどう分析しているか。

北朝鮮の行動については、一般的に、「29歳の金正恩第一書記が、軍や政治エリートに対して自分がいかに断固とした果敢なリーダーであるかを誇示することによって、足場を固めようとしているのが主な動機だ」と解釈されている。

それもひとつの解釈だとは思う。しかしここ数週間、北朝鮮の動きについてさまざまな解説がなされているにもかかわらず、それらにすっかり欠けている視点がある。私はそれをここで紹介したい。

国民の3分の1が食料不足という推定も

北朝鮮の新たな指導者たちが危機感(自分たちの国は四面楚歌の状況にあり、外部の敵からの攻撃が差し迫っているという危機感)をあおり立てる必要があると判断した主な理由は、統制がますます困難になりつつある脆弱な国内情勢に、彼らが不安と恐怖を感じているからだと考えられる。

冷戦の終結により、ソ連からの援助がストップして以降、北朝鮮の経済システムは徐々に行き詰ってきている。1995年には大飢饉に見舞われたが、以後、ずっと食糧不足の状態が続いている。ある推定によると、人口2300万人の北朝鮮国民の実に3分の1が食糧不足に直面しているという。

北朝鮮の食糧配給制度は崩壊しており、政府は民間の市場や、一部の民間取引を容認するようになっている。ボトムアップ型の第二経済が具体化してきているのだ。ここ数年、体制側が対処メカニズムとして大目に見ているおかげで、北朝鮮各地で市場が生まれ、取扱商品の種類が増え、商人階層の卵たちが誕生している。彼らは時には政府から嫌がらせを受けることもあるが、容認されており、大方は政府の外側にいるという位置づけだ。

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