プロからみると、目の健康法はウソだらけだ 激しい眼球体操は危険!洗ってもダメ!

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目の運動をまじめにやって網膜剥離になった中年の患者を私は何人も診察しており、網膜剥離の緊急手術を何人もしました。まったく人騒がせな素人運動療法です。

困ったことです。一般の人は目を激しく動かすことが、走ることで健康になるのと同じたぐいと思っているのでしょう。激しく目を動かすという行為は、目の中の硝子体線維を激しく揺さぶる行為であり、目の健康増進や老化防止などにはまったく役に立たないばかりか、網膜剥離の原因になるのです。

洗浄液で目を洗ってはいけない

目を水で洗うと、気持ちがよくて何かとても健康的なことをしているような錯覚に陥ります。学校のプールなどにも洗眼器が設置されていることが多いですね。蛇口をひねれば両目に合わせてシャワーのように水道水が出てきます。

しかし、水道水で目を洗ってはダメです。目にゴミが入ったとき以外は目を洗ってはいけません。涙成分の中の油性分やムチンなどの角膜を守ってくれる成分が水で洗い流されると角膜が傷みます。また水道水も無菌ではありません。一定の菌数以下というだけで、汚染されています。地方の水道水にはアメーバ原虫がいることもあります。

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テレビのコマーシャルで、花粉症のときは目を洗いましょうなどと、目を洗うホウ酸などの洗浄液が宣伝されています。これもとんでもないことであることが理解できるでしょう。目の大事な油層やムチンなどの角膜保護成分を洗い流し、さらには目に汚染液を行き渡らせることになります。あのような冗談としか言いようのない薬もどきが、かえって目の病気を増やすのです。

目は非常に繊細な臓器なのです。プールなどではゴーグルをつねに着けましょう。ゴーグルを外すのは、シャワーを浴び終わって、タオルで水を拭いてからです。

花粉症には残念ながら決定的な対策はありません。花粉の季節はコンタクトを避け、できれば大きめのメガネで目を守ることです。

深作 秀春 眼科専門医、深作眼科院長

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ふかさく ひではる / Hideharu Fukasaku

神奈川県横浜市生まれ。米・独で研鑽を積み、白内障や緑内障などの近代的手術法を次々と開発。米国眼科学会理事を務め、眼科殿堂選考委員、学術賞審査委員などを歴任。それまで不可能とされた眼病の新しい治療法の開発や多くの革新的眼科手術法の開発により、国際眼科学会最高賞を20回受賞。2017年には、世界最高の眼科外科医に贈られる「クリチンガー・アワード」の欧米以外の医師では初めての受賞者となった。現在は世界最高のスーパードクターとして25万件の手術実績を有し、日本中だけでなく世界中から患者が治療を求めて来院する。他方でプロ芸術家でもあり多摩美術大学大学院を修了し日本美術家連合会員という画家としての一面も。

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