異次元の金融緩和で、日本は再生するか? 日銀短観から読み解くアベノミクスの行方(下)

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「大胆な金融緩和」の末、ますます格差が広がるおそれも

さらに深く考えてみましょう。モノの値段はどんどん安くなりながら、土地や株などの値段が上昇すると、どんなことが起こるのでしょうか。

私は、資産を「持つ者」と「持たざる者」の格差が広がるのではないか、と考えています。

資産を持たざる人が、お金を得るために持っているものは、生産手段しかありません。つまり、モノやサービスを生み出す自分の労働力だけです。しかし、それを対価にしたモノの値段が上がらないわけですから、賃金はそれほど上がりません。さらに、土地や株式の価格が上がるわけですから、購入することが難しくなります。

一方、蓄積した富を持っている人たち、特に株や土地などを持っている人たちは、何もしなくても資産の価値が上がるわけです。これらを売却すれば、資産の価値が上がった分、お金をより増やすことができます。

このように、資産を持っている人たちは余計にお金を得ることができて、持たざる人たちは富を得ることが難しくなるということが起こる可能性があるわけです。これを、政府がコントロールできるかが問題です。

もう一度、バブル期を振り返ってみましょう。時の政権は、中曽根、竹下、宇野、海部政権でした。バブル当時は、土地の値段がぐんぐん上がり、景気も良かったわけですから、国民も政治家たちもみんな喜んでいました。日本はバブルであることは間違いなかったのですが、政府、とくに政治家は「景気が良いのに、なぜ減速させなければならないのか。バブルのままでいいじゃないか」と考え、金融をなかなか引き締めようとしませんでした。景気が良いことは、選挙にも有利に働くからです。

その延長線上に起こったのは、バブルの崩壊でした。そして、借金漬けの会社の破綻。多くの不良債権と金融機関の破たんです。土地の値段なんか、ピークではバブル前の4倍も上昇しましたが、その後、しっかり4分の1に落ちました。結局、借金だけが残ったのです。世の中、バブルは続かないのです。

マネタリーベースだけを増やす政策は、こうした事態を招きかねません。実力なきバブルは、遅かれ早かれ、必ず弾けてしまうのです。

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