異次元の金融緩和で、日本は再生するか? 日銀短観から読み解くアベノミクスの行方(下)

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マネタリーベースを増やしても、物価は上昇しない

では、量的緩和を進めていくと、どんなことが起こるのでしょうか。バブル期ではどうなっていたかと言いますと、膨張したマネーは一般消費財の価格上昇をもたらすことはなく、土地や株に流れました。そして不動産や株の値段がどんどん上がり、資産インフレが引き起こされたのです。

1980年代後半のバブル時代、私は若手銀行員でしたので、その当時のことをよく覚えています。土地と株式の価格はすさまじく上昇したのですが、物価はほとんど上がらなかったのです。

アベノミクスを進めると、下手をすればこれと同じことが起こりうるのではないでしょうか。土地や株式の値段が上がるけど、モノの値段は上がらない。つまり、金融政策によってマネタリーベースを膨張させても、急速なインフレは起こりにくく、過剰流動性は不動産や株式等に向かうのではないかと考えられるのです。

この理由は、なぜでしょうか。それは、「モノ余り」つまり供給過剰が背景にあるからだと私は考えています。先ほども述べましたように、日本は長い間、一般消費財や生活に関わる耐久消費財などは、供給過剰が続いています。ですから、マネタリーベースを膨張させたとしても、価格が上昇しにくいのです。

さらに、国内で物価が上昇したとしても、同じものが海外で安く作れるのであれば、安いものがどんどん輸入されてしまいます。こういう面からも、物価を上昇させるのが難しいわけです。

一般的には、通貨が膨張すると、インフレが起こると考えられています。しかし、必ずしもそうなるわけではないのではないか、というのが私の持論です。もちろん、緩やかなインフレをもたらす可能性はあるでしょうが、「2年間で2%の物価上昇」を実現することは、非常に難しいのではないかと思うのです。

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